生涯一書痴! 病高じて古本屋の店主になってしまった、ぺんぺんの読書日記です。書評ってほど偉そうなものではないですが(汗)読んで楽しかった本、いろいろ考えた本を紹介したいです
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さて。
久しぶりの更新だけど、
今回は、ガチの書評というより、覚書です。

今年、一番悲しかったのは、
大好きな清志郎(忌野清志郎)が天国へ行ってしまったこと。
しばらく、ぼんやりうつうつと過ごして、
つらすぎて曲も聴けなくて(泣くから)
きつい日々が続いたけど、
やっと、
「やっぱり、いいなあ。好きだなあ」
という愛しい気持ち、
「こんなに素敵な歌をありがとう」
という感謝の思いで、
歌を聴いたり、口ずさめるようにもなってきた。

もちろん、清志郎がすごいのは歌だけじゃない。
俳優としての演技も好きだったし、
文筆家としての彼も最高だ。

古本屋であるあたしには、
彼の残した軌跡を、他の人に紹介する、
彼の本を人々に届ける、
という仕事があるんだから、
「泣いちゃいられねえ!!」
と(笑)

そういうわけで、
店の方にも、何冊か清志郎の本を出したりしてるんだけど、
中には絶版または版元品切れのものもあり、
「これ売っちゃうと、自分自身も次いつ手に入るか、
わかんないよなあ・・・」
というレア物もある。

未練をぐっと抑えて、
極力、出品するようにはしてるんだが。

これも、そんな1冊。

日記のようなエッセイのような詩のような小説のような、
虚実がないまぜになった不思議な行間の心地よさ。
清志郎はやっぱり天才だ・・・と思った本だ。

憲法、君が代、自殺問題からレコード発禁事件まで、
多岐にわたるエピソードを縦横無尽に語るその文章は、
彼の音楽とおんなじくらい素敵だ。
言葉のセンスが相変わらず素敵で、ため息が出そう。

第1話に理想郷として語られていて、タイトルにもなっている

「双六問屋」

いったい他の誰がこんな言葉を日常的に思いつくというのだ?!(笑)

少し引用させてもらおう。

「双六問屋に行ったことがあるかい?
そこはみごとな世界だった。
双六問屋の世界では履歴書などいらない。
学歴や職歴を誰に告げる必要もないのだ。
(略)みんなが本当の自分の仕事を持っているのだ。
だから当然流行に流されて右往左往している者もいない。
若者は目上の人々に敬意を抱き、
年長者は何が本当に大切なものかよくわかっている。
双六問屋は理想郷であった」


うーん。
とにかく深い(笑)

雑誌「TV Bros.」(東京ニュース通信社)
1998年11月21日号~2000年7月22日号の連載に
加筆・訂正したもの43話に加え、
「没原稿(一)~(三)」と各話のレコード解説は書き下ろし。

各話の巻末にレコード・CD評がついていて、
清志郎がどんな音楽を聴いていたのかがわかってファンには興味深い。
オーティスやジミヘン、マディ・ウォーターズ、
ジェームス・ブラウンなどなど。
そしてRCサクセションラフィー・タフィーなど
清志郎自身の作品についても言及。
これがまたいいんだわさ。
載ってるCD全部欲しくなっちゃうくらい(笑)
時間をかけて、清志郎を偲びながら、
こつこつ集めてみるのもいいかな。
下に、タイトルとアーティスト名を含む、目次も書いておくので、
「清志郎が好きだった音楽」
に興味のある人は、
じっくり眺めてみて。

あいだにはさまる
「絵画開眼」
(イマーノ画伯のイラストや4コマ漫画)
も、なんとも言えず味があるねえ。

ポラロイド写真で綴る
「瀕死の近況双六・問屋への道」
も楽しい。

実は、この『瀕死の双六問屋』は、
読みたいだけなら、小学館文庫で復刊されたものが、
まだ入手可能。
なんで、単行本がレアで高値なのかというと、

「この本のために作った極上のロックン・ロール4曲入り特製CD付き」

だから。

収録曲は、
 
「瀕死の双六問屋のテーマ」 
「遠いシナリオ」 
「フリーター・ソング」 
「瀕死の双六問屋 エンディング・テーマ」


どれも、素敵な曲ばかり。
本のオマケというには、すごすぎる(笑)
「瀕死の双六問屋のテーマ」
は、一度聴くと、耳について離れなくて、
脳内でエンドレスで流れ続けるグルーヴ感がたまらん(笑)



『瀕死の双六問屋』

<目次>

第一話 問屋からきた男
「Rainbow Cafe」忌野清志郎Little Screaming Revue
第二話 小部屋へ向かう道
「STAX SOUL CHRISTMAS」V.A.
第三話 孤独の叫び
「SINGS SOUL BALLADS」OTIS REDDING
第四話 防波堤は風の中
「IN MY OWN DREAM」THE BUTTERFIELD BLUES BAND
第五話 悪い星の下に
「GROOVIN'」YOUNG RASCALS
第六話 新しい旅立ち
「LIVING THE BLUES」CANNED HEAT
第七話 リスト・バンドを残していった男
「GOOD AS I BEEN TO YOU」BOB DYLAN
第八話 恋のダイヤモンド・リング
「THE ORIGINAL」GARY LEWIS&THE PLAYBOYS
第九話 双六問屋へ帰りたい
「DOUBLE DYNAMATE」SAM&DAVE
第十話 エレファントラブがやってくるヤァー・ヤァー・ヤァー
「STAY GOLD」エレファントラブ
絵画開眼 一
第十一話 がんばれ!アフロ之助・外伝
第十二話 ケンとメリーのGTR
「Mr.LOVE PANTS」LAN DURY&THE BLOCKHEADS
第十三話 最高の一日の始まりに乗り遅れてはなるものか
「Song for a Tailor」Jack Bruce
第十四話 5個目のボタンの方が心配だ
「FOUR FRESHMEN & FIVE TROMBONES」FOUR FRESHMEN
第十五話 本当に必要なものだけが荷物だ
「KING&QUEEN」OTIS REDDING & CARLA THOMAS
第十六話 続・ケンとメリーとGTR
「BEST OF P.P&M」PETER,PAUL&MARY
第十七話 雨の日のカー・ウォッシュ
「RUFFY TUFFY」忌野清志郎
第十八話 五十年以上も戦争の無かった国に生きている
「COVERS」RCサクセション
第十九話 オレンジをさがしに・・・
「SOUL TO SOUL」V.A.
第二十話 宇宙飛行士の友達
「VENTURES IN SPACE」THE VENTURES
絵画開眼 二
第二十一話 ラフィータフィーついにステージ・デビュー
第二十二話 また放浪の旅が始まる
「Cahoots」The Band
第二十三話 様々な制約と規制の中で、がんばれ外資系の会社よ!
「冬の十字架」忌野清志郎 Little Screaming Revue
第二十四話 俺を笑わせてくれないか
「BITTER WITH SWEET」THE 49ERS
第二十五話 子供には必ず親がいるとはかぎらない
「WHEN A MAN LOVES A WOMAN」Percy Sledge
第二十六話 ドブネズミどもに捧ぐ
「AXIS:BOLD AS LOVE」THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE
第二十七話 職安へ行こう!
「坂道」ワタナベイビー
第二十八話 ロックン・ロール・グルになって夢を実現するんだ
「Say It Loud I'm Black & Proud」JAMES BROWN
第二十九話 2001年・宇宙からの手紙
「The Letter(from THE BEST OF Box Tops)」Box Tops
第三十話 ブルースをつめ込んでワゴン車で出発だ
「MEMBERS ONLY(from MEMBERS ONLY)」BOBBY BLUE BLAND
絵画開眼 三
第三十一話 君は水道を出しっぱなしにしたまま行ってしまった
「DO RIGHT MAN」DAN PENN
第三十二話 元気を出してねと、よく女に言われるけど
「I FEEL FINE(from PAST MASTERS vol.1)」THE BEATLES
第三十三話 月の砂漠より謎の譜面を
「BO&GUMBO」BO&GUMBOS
第三十四話 ちょっと待ちねえ、これを聴きねえ
「MOONDOG MATINEE」The Band第三十五話 ロス・アンジェルスから愛を込めて
「I THANK YOU」SAM&DAVE
第三十六話 俺のことは早く忘れてくれ
「コンパウンド」加部正義
第三十七話 昨日、天国から天使がここにやって来た
「ANGEL(from CRY OF LOVE)」JIMI HENDRIX
第三十八話 毎日がとても退屈だったから俺はインディーズに走った
「RESPECT!」V.A.
第三十九話 泥水(マディ・ウォーターズ)を飲み干そう
「AT NEWPORT」MUDDY WATERS
第四十話 たかだか40~50年生きて来たくらいでわかったようなツラをすんなよ
「夏の十字架」ラフィータフィー
第四十一話 ユーモアが必要さ、僕らの僕らの間には
「ライブ・ハウス(from 夏の十字架)」ラフィータフィー
第四十二話 何十年ぶりのことだろう、日記をつけてるんだ
「誰も知らない(from 夏の十字架)」ラフィータフィー
第四十三話 武田真治がやってきた
「快適な暮らし(from 夏の十字架)」ラフィータフィー
没原稿その一 フランスの友人とワインに関しての日本人向けのおはなし
没原稿その二 日本国憲法第9条に関して人々はもっと興味を持つべきだ
没原稿その三 忍びの世界
号外 眠れなかった男
「BASEMENT TAPES」BOB DYLAN
絵画開眼 四
瀕死の近況双六・問屋への道
解説 町田康
あとがき 忌野清志郎
特製CD収録曲歌詞&クレジット

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『瀕死の双六問屋』忌野清志郎(光進社)
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「瀕死の双六問屋」忌野清志郎
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まだ、現実から、薄い空気の膜一枚、隔てたところに
いるような気がする。

空気さなぎの中にいるみたいな。

丸一日、「1Q84」の世界にいたら、
現実に、なかなか戻ってこられなかった。

まだ、出版されたばかりで、
読了されてない方も多いだろうから、
内容については、深くは触れずにおこうと思う。
なるべく、ネタバレにならないように、
上手く書けるかは、少し自信がないんだけど(汗)

刊行まで、何の宣伝も情報もなかったのは、
先入観や予備知識なしに、
ただ、物語の世界で、それぞれが
自分だけの「1Q84」を生きてほしいってことだと思うから。
あたしも、できるかぎり、それを損ねないようにはしたい。

そして、一応、断っておくと、
便宜上、書評、ブックレヴューという名前はついているけど、
これは、あくまでもあたしの個人的な感想文だからね。

さて。
この物語の主人公は、
筋肉とマーシャル・アーツを専門とする、
ちょっと変わったトレーナーのような仕事をしている「青豆」さん(女性)と、
予備校の数学講師をしながら、
小説を書いている「天吾」くん(男性)。

青豆さんは、時折、老婦人から依頼される彼女にしかできない「副業のようなもの」から、
天吾くんは、知り合いの編集者に持ちかけられた、新人賞の応募原稿のリライトの話から、
それぞれに別の道を経て、
同じ場所にたどり着く。
真実という惑星の周りをめぐる二つの衛星。
微妙な軌道の違いの問題で、お互いに、その存在を知ることはない。
けれど、それは確かにそこにあるのだ。
空に浮かぶ、大きな黄色い月小さな緑の月のように。

各章で、二人の物語が交互に語られる。

構成としては、
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」
に近いかな。

最初、関連性の見つけられない二つの物語が、
ある一点で接し、
やがては、さらに複雑に絡み合っていく、
それは、あらかじめ誰にでも予測できることだし、
こういう書き方自体は、
小説でも、漫画でも、
それほど目新しいものでもない。
それでも、初めて、二人のあいだの接点が出現したとき、
少しずつ、本人たちは気付かないままに、
彼と彼女の距離が近づいていくことを実感していく過程には、
細胞の全部が、ざわざわとふるえるような気持ちになった。

素直な感想を言えば、
「あたしにとって」、この本は、今までで読んだなかで、一番印象的な「恋愛小説」だ。

「愛」についての記述に最も共感を覚えた、という意味で。

甘ったるいラブソングの「運命」なんていう言葉を、
もう信じられなくなるくらいには(笑)、充分な数の恋をして、
まがいものの「運命の人」なら、一山いくら、で売れるくらい手に入れた。

「大人になってわかったけど、白馬の王子様って、おらんもんやったんやねぇ」
「さがしゃどっかにおるもんやと思うとったけど、アレはおらん。ツチノコと一緒や」

(『パーマネント野ばら』西原理恵子)


「運命の人」「100%の女の子」ツチノコの一種かもしれない(笑)

でも、青豆さんと天吾くんの世界にいるあいだ、
それを信じたい気持ちになった。

たった一人の人だけを愛し続けること。
20年ものあいだ、互いにそれを伝えることもないのに、
同じ気持ちを持ち続けていること。
結婚の条件とか、相手が思いを返してくれるかどうかとか、
そんな現世的なこととは何の関係もなく、
ただ、心が自然に誰かを選び取ってしまうこと。
わかちがたくその人が自分の魂と繋がっているということ。
そしてそれが許されること。
それは、あたしの思う「しあわせの概念」にかなり近い。

錯覚でもいい。
だって、
「君の愛がなければ、それはただの安物芝居に過ぎない」
(『イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン』)

のだし、
「君が世界を信じなければ、またそこに愛がなければ、すべてはまがい物に過ぎない」
(『1Q84』BOOK2 第13章)

から。

             *         *         *

二日間で、二度読んだ。
一度目は、普通に。
二度目は、青豆さんの章だけを続けて、次に、天吾くんの章だけを続けて。

二度目に読んだときは、
「喪失」「選択」という言葉が、
頭の中で、白くチカチカと光っていた。

このお話をある種の寓話としてとらえたら、
その教訓は、なんだろう。

決して帰りの列車の停まることのない猫の町。
この世ではない、失われるべき場所。
月のふたつある世界。
呼び名はどうであれ、
取り返しのつかないところまで、
運ばれてしまうその前に・・・。
選ぶこと?
大切なものを、きちんと。
できればタイミングを間違えないように。


             *         *         *

発売日に、購入して、
読み終わるまでのあいだに、
何度、この本のニュースを目にしたことだろう。
文芸や、出版業界のニュースではなく、
一般ニュースで、これほど、「村上春樹」という名前を、
聞くことになるとは思わなかったなあ・・・。

初めて、読んだ18歳の頃、
『ノルウェイの森』が出る少し前の春樹さんは、
もう充分に人気のある作家だったけれど、
それは、文学好きの一部の人だけに共有される暗黙の了解みたいなもので、

「村上春樹が好きなんだ」
「俺も」


という会話だけで、下手したら、恋が始まってしまうくらい(笑)、
まだ、その名は、ささやかで親密な空気の中にとどまっていた。

いつのまにか、彼の本が、ベストセラーになり、
こんなに多くの人に読まれるようになった理由は、なんだろう、
って考えてみた。

彼の本(特に長編小説)が、

「多義的な読み方、を許す、小説」

であること、
が最大の理由じゃないかと、あたしは思う。

先に書いたように、恋愛小説ともとれるし、
教訓を含んだ童話、寓話のようでもあるし、
作中の、ある仕掛けを取り上げればSFと呼んでもいいし、
現実世界では、あたしたちの知らない架空の存在、
(妖精、幽霊、神様、悪魔、精霊と同じように、
もしかしたら、いるかもしれないし、いないかもしれないもの)
を扱っている点では、ファンタジーだ。
タイトルと、その内容から、ジョージ・オーウェル「1984年」を意識した
ディストピア小説、という解釈だってできるし、
ハードボイルド小説めいた雰囲気を持ち、
大きな謎を含んだミステリーでもあり、
「とてもとても怖い物語」という意味では、ホラーと呼んだってかまわない。
80年代という近い過去の日本を舞台にした架空の歴史小説
カルト教団を諷刺する社会派小説・・・
要するに、なんだっていいのだ。

それは読者の判断に委ねられているのだと思うから。

読者には、誤読の自由がある。

というより、春樹さんの小説には、
初めから、「こういうふうに読んで欲しい」とか「こう読むべきだ」
というような押し付けがましさがない。
それは、ただ、作品として、提示されるだけだ。
書く側のメッセージ、伝えたいこと、
というのはもちろんあるのかもしれないけど。

村上春樹の研究本、ガイドブック、作家論、作品論の類が、
現代の他の作家さんに比べて、格段に多いのは、
彼が「ベストセラー作家」「人気作家」だからではなく、
その、読み手の自由度の高さ、が、
様々な思索を喚起し、
どのように読み解くべきなのか、を語りたくなり、
また、自分以外の読み手がそれをどう読んだか
を知りたくなる、からではないか。

引用される、たくさんの本、映画、音楽。
そして、さらに多くの比喩(メタファー)。

あまりにもピースが多すぎて、
完成したときの全体像が想像できないパズル。
人によっては、本来入らないはずのところに、
別のピースがどういうわけか上手く嵌ってしまい、
他の人とは出来上がりが違ったりするパズル。
そして、たとえ、途中でいらいらしたり、わからなくなったりしても、
そのパズルを作ること自体は、誰にとっても、楽しいのだ。

あたしは、春樹さんの小説をそういうものだと思っている。

「1Q84」でも、
他のいくつかの春樹さんの小説と同様に、
過去の他の作家さんの作品からの引用が、
物語に、深みと、様々な想像の余地を与えてくれる。

今回の作品に出てくるのは、
チェーホフの『サハリン島』
『平家物語』
どうやら、架空の作中作であるらしい『猫の町』
(あまり有名でないドイツの作家が書いたもので、
旅についてのアンソロジーの中の一編ということになっている。
該当する作品が見つからなかったから、多分そうだと思う)
そして、
ジョージ・オーウェルの『1984年』

「2足す2は5である」世界は、
特に、イメージの素として、物語に深い影響を与えている気がした。

でも、何よりも
(いま、この文章を書きながら、再々読に入っているのだけど)
「1Q84」のテーマは、
結構ストレートに、
エルサレム賞(イスラエルの文学賞)授賞式の講演で、
春樹さんが語ったこと、そのままでいいんじゃないかと思う。

「私たちはみんな、多かれ少なかれ、卵なのです。
それぞれに、はかなくもろい殻の中に入った、かけがえのない、取り替えの利かない魂です。
これは私にとっての真実であり、みなさん一人ひとりにとってもそうです。
そして、私たちはすべて、程度の差こそあれ、高く、堅固な壁に直面しています。
その壁には「システム」という名前がついています。
本来は私たちを守るはずの「システム」は、時に独走し、
私たちを殺し、さらに他者を殺すようにしむけ始めます。
冷酷に、効果的に、組織的に。

ひとつひとつの魂の尊厳を導き出し、光を当てること、
それが、私が小説を書くただひとつの理由です。
物語の目指すものは、
「システム」の網の目に私たちの心が絡め取られ、汚され傷つけられることを防ぐために、
常に「システム」に対する警鐘を鳴らし、それを白日の下に明らかにし続けることです。
生と死にまつわる話、愛の物語、
ときに、人々を泣かせ、恐怖に震えさせ、腹の底から大笑いさせる物語を紡ぐことによって
かけがえのない、一人ひとりの心の在り様をくっきりと描き出そうと試み続けることが、
小説家の仕事であると、私は確信しています。」

(2009年2月15日 「エルサレム賞」受賞式でのスピーチの一部。
しっかりと受け止めるために、稚拙だけど、ここだけ自分で訳してみた)


避けがたく、逃れようもなく、いつのまにか組み込まれてしまった「システム」の中で、
ちっぽけにみえる人間が、自分を、そして愛する人を守るために何ができるか。

多分、そういうこと。

まあ、なにはともあれ、
この本を読んで、あたしはよかった。
そして、これからも何度も読むだろう。
上下巻ではなく、Book1/Book2という形式であり、
巻末に作品自体の「完」や「了」という記述がないことから、
どうしても続編があるのでは?
というより、
あればいいな、と思ってしまうんだけど(笑)

1Q84

「1Q84」(Book1/Book2)村上春樹(新潮社)

村上春樹の本を古本ぺんぎん堂で見る    
店主の好きな作家・村上春樹



テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

今日のも、ブックレビューというより、
覚え書きです。

あたしの蔵書だけど、
先日、店に出して、
未練たらたらに、ちょっと高額だったにもかかわらず(笑)、
ありがたくもご注文をいただきました。
だから、あたしの本であるのは、今日で終わり。

あとで、思い出せるように、
どんな本だったか、少し書き留めておこうかと思って。

1981年7月20日
講談社から刊行された、
村上龍と村上春樹の対談集

まずは、若き日のお二人の写真。

うわー。うわー。ほんとに若いなあ・・・

と、ちょっと、笑ってしまう。
・・・いや、待てよ。

30年近い月日が経ってるということは、

これを書いているあたしにも、
同じだけの時間が流れたってことで・・・

いま、かなり微妙な気分になった(笑)

記憶を取り出しやすいように、
とりあえず、目次、書いとこ。


都会と田舎
なぜ小説を書くのか
新人賞の周辺
一つの言葉から
記号と会話
うちのかみさん
わが愛するネコたち
チャーリー・パーカーを聴いたか
小説家という職業
三作目で飛べ


コインロッカー・ショック
「グッド・ライティング」と「トゥルー・アート」
飢えと文学
『ブルー』から『コインロッカーまで』
冷酷と傲慢
『風の歌』と『ピンボール』の世界
小説のブラックホール
ただ作品があるだけだ
セックスと死
「切符自動販売機」型モラル
知性と感性
作品、表と裏
一人と二人の日常
がまん、がまん、そして感動
日本の小説、外国の小説
僕にとっての名文とは
パワーの拒否
What happened is all good
六十年、七十年代に何があったのか


村上龍のこと(村上春樹)
村上春樹のこと(村上龍)


Ⅰは、1980年7月29日に、
Ⅱは、1980年11月19日に、
行われた対談。
Ⅲは、あとがきにかえて、
二人がお互いについて書いた短い文章。

何もかもが懐かしい(笑)

1980年。
春樹さんは、
『風の歌を訊け』『1973年のピンボール』で
高い評価を受けたあと、
後に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の原型となった、
『街と、その不確かな壁』という中編を書き、
(二つの対談の狭間に『文學界』に発表された)
「僕と鼠」の物語の三作目(『羊をめぐる冒険』)の構想を練りながら、
ご自分の店である千駄ヶ谷のジャズ喫茶「ピーター・キャット」で働き、
奥さんと2匹のシャム猫と暮らしていた、
というのがわかった(笑)

ちなみに、当時、あたしはまだ小学生。
『1973年のピンボール』に出会い、
この『ウォーク・ドント・ラン』を含め、
村上春樹の既刊を買い漁り読みふけることになるのは、6年後。

この頃(1980年代)は、
春樹さんと龍さんが、並べて語られることが多かったなあ。

若い頃の3歳差というのは実は結構大きいのだが(笑)
大雑把なくくりでいえば、
年齢が近いこと(村上春樹1949年生まれ、村上龍1952年生まれ)
近い時期に、「群像新人文学賞」でデビューしたこと、
(村上春樹1979年受賞、村上龍1976年受賞)
それぞれ3作目である長編小説で「野間文芸新人賞」を受賞していること、
(第3回:村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』
 第4回:村上春樹『羊をめぐる冒険』)
文体、作風はずいぶん違うけど、
新しい時代の小説の担い手として、期待されていたことで、
二人を一緒に紹介したり、対比するような記事が書かれたりもしていた。

この対談集では、
ライバルというほどの敵対関係ではなく、
友人というには、あまりに互いの違いを認識しすぎている二人の、
微妙な距離感が、ふわふわと漂っていて、ある意味で楽しい(笑)

龍さんは、「小説は自己解放だ」と言い、
春樹さんは、「小説は自己変革だ」と言った。


当時、その目指すものの違いによって、
前者は、ひとつのムーブメントを起こすだけの瞬発力と破壊力
後者は、長く読み継がれるものを書き続ける持続性
をそれぞれ持っているのではないか、とあたしは思った。
これについては、あながち、間違った印象でもなかったかも。

対談集というのは、確かに面白いな。
小説では、見えてこない作家の素顔を垣間見ることができるし、
故・吉行淳之介さんのように、
人の話を引き出すのが、それはもう天才的に上手い人がいたり、
作品を読むだけでは、すべては理解することが難しかった、
テーマやその意図するところについて、
著者自ら語ったものを読むことによって、補足的な知識を得ることが、
より深く作品世界に入り込む、助けとなることもある。

でも、この対談集を読んで、

「やっぱり、作家は文章を書くのが仕事なんだ」

というのをあらためて、認識した。
だって、多岐にわたる主題で語られ、創作の過程や、興味の対象について、
あふれるように語られた対談の内容が、充分に面白いものであったにかかわらず、
一番、印象に残ったのは、
たった2ページずつの、二人の書いた文章だったんだもの(笑)

対話をしている村上春樹と村上龍は、
人間としての村上春樹と村上龍であって、
作家・村上春樹と作家・村上龍は、
その人間としての彼らに包括されるものではあっても、
全く、別のフェイズで、
書くことによって、あたしと、そして世界と繋がっている存在なんだ。
良くも悪くも、
その人が最も上手く効率的に説得力と共感を持って、世界とアクセスする方法が、
「書くこと」である人種を「作家」と呼ぶんだ。
・・・という気がした。

いまとなっては、村上春樹ファン、コレクターの最大の関所というほど、
入手しにくくなり、
どれほど復刊リクエストがあろうとも、
再版話が、ちらりとも出ない、「ウォーク・ドント・ラン」

店の商品情報のレヴューのほうには、
この本が頑なに再版されないのは、
若気の至り?な気負った発言や、
今とは考え方が変わってしまった部分を含め、
春樹さんにとっても、龍さんにとっても、
あれやこれや気恥ずかしいので、
(あたしたち一般ピープルで言えば、
「幼い日の、鼻にビー玉を詰めたおポンチな写真」や、
「ロマンティックな詩集から拝借した言葉でコラージュした
背筋がムズムズする中学生時代のラブレター」

のように。笑)
厳重に封印されたのでは?
という世間でも言われている推測を書いたのだけど、
もしかしたら、
春樹さんについて言えば、
専門的な知識を持つ方に話を訊くとか(『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』
たぶん、どうしても、ああいうかたちで消化する作業が必要だったと思われる
『アンダーグラウンド』『約束された場所で』のようなノンフィクション以外は、
あらゆるものを

「小説という作品の中で伝えること」

が自分にとって最上の手段である、という認識に至ったのではないか、
というような気がした。
どうだろう?

タイトルの『ウォーク・ドント・ラン』は、
村上龍の巻末の一文から、取られている。

―村上春樹のことを考える時、ある情景が浮かんでくる。
知り合ったばかりの音楽好きの少年が二人、部屋でレコードを聞いている。
プレイヤーから流れているのは、ヴェンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」だ。
(略)二人は何回も、何十回もレコードを回す。
そして、窓の外が暗くなった頃、一人が「いいなあ」と言って、もう一人がうなづいただけで、
二人の少年はお互いの部屋へと帰っていく。(略)
僕らが演奏家だったら、あのいかした曲を、ギターとベースで一緒にやれるのになあ、そう考える。
小説家は、同じ曲を演奏することができない。

(「村上春樹のこと」~『ウォーク・ドント・ラン』より)

ウォーク・ドント・ラン

「ウォーク・ドント・ラン」村上龍・村上春樹(講談社)

詳細データを古本ぺんぎん堂で見る    
「ウォーク・ドント・ラン」村上龍・村上春樹



テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

ギリシャ、トルコでの旅を、
村上春樹さんの文章と、松村映三さんの写真で綴った旅行記。

下の画像は、1990年発行の初版本。
現在入手可能な、2008年版の単行本は、
この本に、未発表写真を加えて再編集した新装版。
最初の本は、
GREECEギリシャ編「アトス―神様のリアル・ワールド」
TURKEYトルコ編「チャイと兵隊と羊―21日間トルコ一周」

からなる函入2冊セットだった。
装丁が美しくて好きな本。

あたしの蔵書だけど、
お客様にお譲りすることにしたので、
手離す前に、少し何か書いておこうかと思って。

エーゲ海から峻険な2000メートルのアトス山が切り立つ半島を、
修道院に泊まりながらひたすら歩くギリシャ編。
アトスは、東ローマ皇帝、トルコ人、ギリシャ政府・・・とどのような政治体制下にあっても、
微塵もゆらぐことのない宗教的共同体として、
完全な自治を認められているギリシャ正教の聖地。
女と名のつくものはたとえ犬といえど一歩も入れない聖域で、
二十の修道院に約二千人の僧が、
厳しい戒律と厚き信仰の下に、
ビザンティン時代とほとんど変わらない質素な自給自足の生活をしながら、
神に近づくために日々祈りを捧げている。

『僕は本でアトスのことを読んで以来、どうしてもこの土地を一度訪れてみたかった。
そこにどんな人がいて、どんな生活をしているのか、この目で実際に見てみたかったのだ。』

(GREECEギリシャ編「アトス―神様のリアル・ワールド」より)

そんな理由で始まったギリシャへの旅。
そして、そのまま国境を越えて、トルコへ。
この旅の7年ほど前、たった一日だけ、泊まることもなく、トルコに足を踏み入れた彼は、
短い時間でありながら、
トルコという国に、そこにあった空気の質のようなものに、引きつけられ、
いつか再訪を・・・できれば、今度はゆっくりと時間をかけて、
トルコを旅行して回ってみたいと思っていたという。

神々の山の静謐で荘厳な空気、
エーゲ海のくっきりした光と影、
兵隊だらけの孤独な国、
埃っぽい道、
アジアの端っこの乾いた熱風、
羊の海、
そして、行く先々で出会う人々。

光や空気や熱や匂いさえ、立ち上ってくるような、旅の記録は、
春樹さんの文章を愛する人だけでなく、
旅を・・・そして、かの国を愛する人々に、
強い共感と、
デジャヴュのような懐かしさと、
ここではないどこかへ、今すぐ出かけたくなるような、
なんだか落ち着かない気持ちさえ抱かせるような、
すぐれた紀行文。

でも。
あたしが、この本についてのレヴュー(つーか感想文)に名前をつけるとしたら、
どうしても、

「猫をめぐる冒険」

というタイトルしか思いつかない(笑)

何度か読み返した本なのに、
ギリシャ編、トルコ編ともに、
あたしの記憶に印象的に残っているのは、
どちらも猫にまつわる文章だからだ。

トルコ編では、『ヴァン猫』の章。
「トルコに来たら、何をしよう、何をしたいという希望は殆どなかった」
という春樹さんが、
唯一、かなえたいと思っていた、ささやかな希望というのが、
「もしできることならヴァン猫に会って、ヴァン湖で泳ぎたい」
というものだったらしい。
ヴァン湖は、アララット山の南方、イランの国境近くにある塩分濃度の濃い大きな湖で、
ヴァン猫は、この湖のそばに住む特殊な猫。
オッドアイ(左右の目の色が違う)の白猫さんなのだが、
泳ぎが大好き、という相当変わった猫なのだ。
「ヴァン湖でヴァン猫と一緒に泳ぐ」
これは確かに、かなり貴重な体験で、
猫好きにとっては、かなえてみたい夢のひとつだろう。
(あたしも、この本を読んで以来、いつか・・・と夢みたりしている)
結果として、猫と一緒に泳ぐことはできなかったけど、
ヴァン湖で泳ぐ、
と、
ヴァン猫に会う、
という彼の目的は果たされた。(ただし別々に。笑)
絨毯屋で「招き猫」としての任務を遂行している(?)ヴァン猫さんの話は、
是非、「トルコ編」で、読んでみて。

そして、ギリシャ編の『カフソカリヴィア』
アトスでの旅の終りに、カフソカリヴィアの宿坊で、
春樹さんと松村君は、史上最悪とも言える夕食をとることに。
石みたいに固くて一面に青黴が生えたパンを水でふやけさせたもの。
冷えた豆のスープに、どくどくと酢を注いだもの。
高血圧の人が食べたら、ばたばた死ぬだろうと思われる、
しょっぱい壁土みたいなフェタ・チーズ。

そのとき、修道院に、いついているらしい猫が現れ、
給仕の僧にエサをねだって、与えられた
「豆スープにつっこんだ黴パン」
を美味しそうに食べる。

このときの春樹さんの文章が、なんとも言えないくらい、印象的だ。

『本当に世界は広いと思う。
たぶんカフソカリヴィアに生まれて育った猫にとっては、
食料とは実に黴パンと酢入りの豆スープなのだろう。猫は知らないのだ。
山をいくつか越えると、そこにはキャット・フードなるものが存在し、
それはカツオ味とビーフ味とチキン味に分かれ、
グルメ・スペシアル缶なんてものまであるのだということを。
猫たちのあるものは運動不足・栄養過多で早死しているのだということを。
そして黴パンなんてものは断じて猫の食べるべきものではないのだということを。
そんなことはカフソカリヴィアの猫には想像もできないのだ。
きっと猫は、「おいしいなあ、今日も黴パンが食べられて幸せだなあ。生きててよかったなあ」
と思いながら、黴パンを食べているのだ。』

(GREECEギリシャ編「アトス―神様のリアル・ワールド」より)

アトスでの旅を終えて、
タベルナで、冷えたビールを飲み、
フィッシュ・スープとフライド・ポテトとムサカとサーディンとカラマリとサラダという現世的な食事を、
ビーチボーイズの音楽と共に楽しんだ彼は、
心底、黴パンとの別れを喜んだだろう。
それが良くも悪くも、彼(=あたしたち)にとってのリアル・ワールドだからだ。

それでも、旅についての文章を書きながら、春樹さんは、アトスを恋しく感じる。
人々が貧しいなりに、静かで濃密な確信を持って生きる地アトス。
「カフソカリヴィアの猫にとって、
黴つきパンは世界でもっともリアルなもののひとつだったのだ。」

と書かれているように、
黴パン猫は、異国の、異文化の、多様な価値観の象徴なのだろうか。

「さて、本当はどっちがリアル・ワールドなんだろう?」

という言葉で締めくくられるギリシャ旅行記は、
「旅をする」ということは、
二つのリアル・ワールドの狭間に身を置き、
自分の立っている場所を、確かめるための作業なのかもしれない、
ということを教えてくれる。

utenenten
「雨天炎天」村上春樹(新潮社)

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「雨天炎天」村上春樹

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もう、めちゃくちゃ久しぶりの更新です(汗)

放置にも程があるっ! ←だから、あんたが放っておいたんだってばよ(泣)

これでは、プレイどころか、
現実だったら、

相手、餓死だよー。

お釈迦だよー。

殺人罪だよー。



えーと、あたしは古本屋店主なので、
店に出す商品としての本には、商品の詳細ページに、
こってり、レヴューを書くし、
ブログの方に、
図書館で借りた本は、「図書カード6年1組ぺんぺん」
自腹で買ったコミックス、文庫などは、「ぺんぺんのお小遣い帳」
というカテゴリがあるので、
そっちに書くだけで、いっぱいいっぱいになってしまい、
上記の範疇に入らないもの、
長すぎてどうよ?というものなどを、ここで紹介するはずが、
なかなか、手が回らない状態になってしまいました(涙)

でも、それだけ文章書いても、
(今日はたくさん店に出品したから、下書きも含め、
原稿用紙換算で、20枚分は書いたと思う・・・)
たまに、

思う存分、1冊の本について語りたい

衝動に駆られることがあるから(笑)
頻度は低くても、
この書評ブログも、細々とでも、続けていきたいな、って思います。

で、久々に、あれこれ書きたくて、
簡単な商品紹介ではおさまらなくなってしまったのが、
この、恩田陸『上と外』

今までも、店に商品として出したこともあって、
再々読くらいなんだけど、何回読んでも、おもしろい。

ざっと、あらすじを紹介すると。

両親の離婚で、別れて暮らす元家族が年に一度、集う夏休み。
中学生の楢崎練は小学生の妹・千華子、母・千鶴子とともに、
考古学者の父・賢がいる中央アメリカのG国までやってきた。
ジャングルと遺跡と軍事政権の国。
そこで四人を待っていたのは「軍事クーデター」。
離れ離れになる親子、二度と会えないかもしれない兄と妹。
密林の中の謎の遺跡と神秘の儀式。
絶え間なく二人を襲う絶体絶命のピンチ。


って感じかな。

幻冬舎文庫書き下ろし、隔月刊行で全6巻。
(当初は全5巻の予定)

って聴くと、何かに似てない?
そう。
スティーブン・キング『グリーン・マイル』ですねー。
毎月1冊ずつ全6巻の分冊で刊行され、
この形式が、読者の飢餓感、わくわく感を誘ったのか、
全米を熱狂させる大ベストセラーに。

「日本でも誰か『グリーン・マイル』みたいなのやればいいのにね。
S先生とか、H先生とか、きっと面白いの書いてくれると思うし、
読みたいんだけどナ」

と、もらしたら、
ご自分が書くことになってしまった、恩田陸さん(笑)
隔月連続刊行は本当に大変だったろう、と思うけど、
他の誰でもなく、恩田さんの書いたものは、間違いなく面白いです(笑)
「ありがとう」と言いたいくらい。

店主は、完結してから、6巻まとめて読んだのですが、
リアルタイムで、読んでた読者、ファンは、さぞヤキモキしたことでしょう(汗)
続きが気になって、不眠になったり、暴動を起こしそうになった人もいそうだな(笑)

1冊1冊は薄い本だけど、
6巻分だと、実は結構な分量だよねえ?
でも、ローラーコースターのように、
恐怖と興奮とある種の快感で一気に結末まで運ばれてしまう。

冒険小説の王道的筋書きだけど、、
少年少女のビルドゥングスロマン(成長物語)として、
家族の絆の物語として、
文明や社会への批判を諷刺を含んだ小説として、
多重的な面白さを持っている。

恩田陸といえば、初期の頃は、個性的といえば個性的・・・、
ややエキセントリックなキャラクターが多かった印象があって、
あたしは好きだけど、万人受けはしないのでは、という気がしてた。
でも、この作品は、老若男女すべてにおすすめできる普遍的な魅力がある。

家族4人以外の、祖父母、叔父、従兄弟といった脇役の個性もしっかり作りこまれ、
(あたしは、職人肌の人が大好きなので、
練のおじいちゃんの大ファンに。
クールな少年ニコも人気が高そうだね。笑)
それが物語を生き生きと動かすエピソードとして、
巧妙なカラクリ仕掛けのように、綺麗な歯車として働いている。
「小説を読む」というより、まるで素晴らしい精密機械の動きに見とれてしまうように、
精緻な時を刻む物語を「美しい」とさえ感じるのだ。

しかも、読後の爽快感は極上

この部分も、それまでの恩田陸作品とは違う印象だった。
わりと曖昧に、謎と、読者の想像の余地を残したミステリアスな結末が、
この人の持ち味かと思っていたんだ。
『上と外』の結末は、
あたしの好きな映画『スティング』『バーディー』のエンディングに
匹敵するくらいの、

「やられた!」感がありました(笑)

書き下ろし隔月刊での文庫発売という初の試みの中で、
(予定よりのびちゃったけど。笑)
ライブ感、スピード感を失うことなく、
これだけの完成度の高いものを書けたことに、素直に驚嘆してしまう。

最初に出たのが、この幻冬舎文庫(全6巻)で、
のちに1冊にまとめて単行本化。
文庫が一部品切れになった頃に、上下2分冊の新装版が刊行。

今、手に入りやすいのは、上下巻だけど、
この全6巻ヴァージョンに、あたしは愛着があったりします。
装丁も好きだし、
通勤やお出かけの電車の中で、読むのにちょうどいい分量で、
(あたしは、結局、一日で全部読んじゃったけど。笑)
それほど、読書に時間を取れない人なら、
一日一冊くらいのペースで読むと、
作中の時間経過とも、ほぼ同じ感じになるので、
すごく楽しいと思うんだ。


uetosoto
「上と外(全6巻)」恩田陸

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「上と外(全6巻)」恩田陸

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さてさて。
内容についてですが・・・。

村上春樹のまえがき「遙か暗闇を離れて」

川本三郎のあとがき「ビデオとの遭遇」
のあいだに挟まれた
1920年代から、刊行前の1984年までの
映画(洋画)の中から、
当時、「ビデオで見ることができる」という条件で選ばれた
264本の映画のガイドブックまたはレビュー本です。

あたしもずいぶん、お世話になった(笑)
ほんとはあまりガイドや
〇〇ベスト100とかいう類の本って
さらっと読みはしても、
参考にはしないんだ。
やっぱり、結局、自分が好きな映画は自分でしか
見つけられないんじゃないかと思ってたし。

基本的には、
雑誌や情報誌で、あらすじ見て
おもしろそう、と思うものを観る。
その中で、気に入った俳優さんや監督さんがいたら、
過去作を全部観て・・・
その過程で、また気になる人がいたら、
今度はそれを・・・

まさに「芋づる式」(笑)

まあ、この本を読んだ頃は、
若かったから、一日に2軒映画館はしご、とか平気だったし、
二番館の固いシートで3本立て観るのも苦にならなかったし、
休みの日にビデオ6本とか、さくっと観てたからなー。
もう、手当たり次第って感じも・・・(笑)

それで、新作や近作を見尽くしてしまうと、
当然、少しずつ、古いものへと向かっていくわけで、
そんなときは、この本を開いてみたりした記憶がある。

天上天下唯我独尊とまではいかないが(笑)
特に誰かの真似をしようとも
誰かをお手本にしようとも
思わないタイプの人間なのだけど、
とにかくもう春樹さんのことは
ものすごく愛していたから(笑)
彼の言葉や、文体や、思考やありとあらゆることの
素になったものは
知っておいても損はないかな、と思ってたらしい(笑)
観た後に、もう一度、春樹さんの感想を読んで、
「なるほど」と思うのも楽しかった。

20年以上の月日が過ぎて、
気がついたら、この本はかなりレアものになっていた。
そんで、あたしは、いつのまにか(笑)
古本屋になっていて、
その価値と、探しているお客さまの数の多さを知りながら、
自分の本棚にそれを収めておくことが
ちょっぴり心苦しくなってきたのだ(汗)

小説と違って、いまさらそう何度も読み返す本でもないし、
もしかしたら、誰かをしあわせにできる本を
もう一度、世の中に流通させるのが使命だと普段、思ってるくせに、
けちなコレクター魂で抱え込んでおくのも、どうかなあ・・・
みたいな。

未練タラタラではあるけど(笑)
8割方、店に出してもいいかな、
という気持ちになったから、
この文章を書いています(笑)
でも、読めるのはたぶん、買ってくださった方おひとりだし・・・
古本での流通量が少ないのも変わらないし、
一度手離してしまえば、あたし自身もう手に入らないだろうし、
いつか、店で、春樹さんの全著作リストをつけた総力特集は
やりたいと思っているから、
ある程度のデータは書き残しておきたい(汗)
お役に立てなかった他のお客さま、
この本の内容を知りたいと思っている人のために、
文章を引用するのは無理でも
紹介されてる映画のタイトルの一覧くらい作っとくかなー(悩)
また、ここの記事、ブログにしては信じらんない長さになっちゃうけど(爆)

ねー?書いたほうがいいと思う?

でも、264本だよっ?!

おしえて おじいさん

おしえて アルムの樅の木よ!(笑)


「・・・書いとけば?」
だそうです。(爆)

ではでは、紹介された映画ビデオ作品一覧。
*( )内の=村上さんの執筆、=川本さんの執筆
ちなみに〇印は、あたしが観たもの。

1926→1949

〇メトロポリス(村)
 フランケンシュタイン(村)
 我輩はカモである(村)
 四十二番街(村)
 コンチネンタル(村)
 オペラは踊る(村)
 踊らん哉(村)
〇マルタの鷹(村)
 若草の頃(村)
〇三つ数えろ(村)
 ギルダ(川)
 トミー&ジミー・ドーシー物語(村)
 黄金(村)
 アパッチ砦(村)
〇第三の男(村)
 アダム氏とマダム(川)

1950→1959

〇サンセット大通り(村)
 リオ・グランデの砦(村)
 舞台恐怖症(村)
 イヴの総て(川)
 サムソンとデリラ(川)
〇アフリカの女王(川)
 真昼の決闘(村)
〇雨に唄えば(村)
 静かなる男(村)
 リリー(村)
〇シェーン(村)
〇百万長者と結婚する方法(村)
 アパッチ(村)
 大砂塵(川)
〇七年目の浮気(川)
 野郎どもと女たち(村)
 オクラホマ!(川)
〇理由なき反抗(川)
 征服者(川)
〇俺たちは天使じゃない(川)
 黄金の腕(川)
〇地下水道(村)
〇バス停留所(川)
 禁断の惑星(川)
 捜索者(村)
〇灰とダイアモンド(村)
 監獄ロック(村)
〇死刑台のエレベーター(村)
 OK牧場の決斗(村)
 突撃(村)
 赤い矢(川)
〇手錠のまゝの脱獄(川)
 旅路(川)
〇熱いトタン屋根の猫(川)
 ガンヒルの決斗(村)
〇お熱いのがお好き(川)
 渚にて(川)

1960→1969

〇荒野の七人(村)
〇アパートの鍵貸します(村)
〇サイコ(村)
 光る眼・未知空間の恐怖(川)
 片目のジャック(川)
 エルマー・ガントリー(川)
〇荒馬と女(川)
〇ハスラー(川)
〇ティファニーで朝食を(村)
 ブルー・ハワイ(村)
 草原の輝き(村)
 脱獄(村)
〇アラビアのロレンス(村)
〇水の中のナイフ(村)
 酒とバラの日々(村)
〇ロリータ(村)
〇ハッド(村)
〇女と男のいる舗道(村)
 何がジェーンに起こったか?(川)
 アラバマ物語(川)
 あなただけ今晩は(川)
 イグアナの夜(村)
 その男ゾルバ(村)
 妖女ゴーゴン(川) 
 質屋(川)
 駆逐艦ベッドフォード作戦(村)
〇コレクター(村)
 ダンディー少佐(村)
 シェナンドー河(村)
〇シンシナティ・キッド(川)
〇何かいいことないか仔猫ちゃん(村)
 エル・ドラド(村)
 バージニア・ウルフなんかこわくない(村)
〇動く標的(村)
 恋人よ帰れ!わが胸に(村)
 わが命つきるとも(村)
 プロフェッショナル(村)
 将軍たちの夜(村)
〇ミクロの決死圏(川)
 吸血鬼(村)
 いつも2人で(村)
 裸足で散歩(村)
 夜の大捜査線(川)
〇卒業(川)
〇俺たちに明日はない(川)
〇暴力脱獄(村)
 生ける屍の夜(村)
 愛すれど心さびしく(村)
 おかしな二人(村)
〇猿の惑星(川)
〇ブリット(川)
〇ワイルドバンチ(村)
〇明日に向かって撃て(村)
〇イージー・ライダー(村)
〇真夜中のカーボーイ(村)
 勇気ある追跡(村)
 ひとりぼっちの青春(川)
 くちづけ(村)

1970→1979
〇ウッドストックⅠ・Ⅱ(村)
 ソルジャー・ブルー(村)
 戦略大作戦(村)
〇M★A★S★H(村)
 パットン大戦車団(村)
 おかしな夫婦(川)
〇小さな恋のメロディ(川)
 マーフィーの戦い(村)
〇キャッチ22(川)
 アンドロメダ・・・(村)
〇ダーティハリー(村)
 愛の狩人(村)
 傷だらけの挽歌(村)
 おもいでの夏(川)
〇フレンチコネクション(川)
〇バニシング・ポイント(川)
 コール・ガール(川)
 THX-1138(川)
〇ルードヴィヒ神々の黄昏(村)
〇ウディ・アレンのSEXのすべて(村)
 ロイ・ビーン(川)
 サウンダー(川)
 キャバレー(川)
 激突!(川)
〇ポセイドン・アドベンチャー(川)
 脱出(川)
 サイレント・ランニング(川)
〇スローターハウス5(村)
 シェイマス(村)
〇続・激突!カージャック(川)
 デリンジャー(川)
〇スケアクロウ(川)
〇ウィークエンド・ラブ(川)
〇スティング(川)
〇エクソシスト(川)
〇ペーパー・ムーン(川)
〇悪魔のはらわた(村)
〇アメリカン・グラフティ(村)
〇チャイナタウン(村)
〇華麗なるギャツビー(村)
 サンダーボルト(川)
〇ゴッドファーザーPART2(川)
 フェリーニのアマコルド(川)
 アリスの恋(川)
 悪魔のいけにえ(村)
〇ヤング・フランケンシュタイン(村)
〇ジョーズ(村)
〇アデルの恋の物語(村)
 アイガー・サンクション(村)
〇さらば愛しき女よ(川)
〇キャリー(村)
 愛のメモリー(川)
 ラスト・シューティスト(川)
 大統領の陰謀(川)
 アウトロー(川)
〇地球に落ちてきた男(川)
〇タクシードライバー(川)
 白い家の少女(川)
 ブラック・サンデー(村)
 ローリングサンダー(川)
〇イレイザーヘッド(川)
〇アニー・ホール(川)
 ラビッド(川)
〇ガントレット(川)
〇プリティ・ベビー(村)
〇アニマル・ハウス(村)
〇天国の日々(村)
〇ビッグウェンズデー(村)
 マチルダ(川)
 ハロウィン(川)
〇ディア・ハンター(川)
 デュエリスト(川)
 愛の断層(村)
 コーマ(川)
 戦場(村)
〇地獄の黙示録(村)
〇テス(村)
 ウォリアーズ(村)
〇アルカトラズからの脱出(村)
 悪魔の棲む家(村)
〇ブリキの太鼓(村)
 少年の黒い馬ワイルドブラック(村)
 タイム・アフター・タイム(川)
〇ローズ(川)
〇リトル・ロマンス(川)
 ヤング・ゼネレーション(川)
 ノーマ・レイ(川)

1980→1985

 ブロンコ・ビリー(村)
〇ロング・ライダーズ(村)
〇殺しのドレス(村)
〇グロリア(村)
〇シャイニング(村)
〇ブルースブラザース(村)
 トム・ホーン(村)
 忍冬の花のように(村)
 ザ・フォッグ(村)
 ダーティファイター燃えよ鉄拳(村)
〇アルタードステーツ(村)
〇ある日どこかで(川)
 クルージング(川)
〇レイジング・ブル(川)
〇フェーム(川)
 最前線物語(村)
〇スター・ウォーズ帝国の逆襲(村)
〇天国の門(村)
〇スーパーマン2冒険篇(村)
〇ディーバ(村)
〇針の眼(村)
〇炎のランナー(村)
〇エクスカリバー(村)
〇郵便配達は二度ベルを鳴らす(川)
〇レイダース失われたアーク<聖櫃>(村)
〇マッドマックス2(村)
 ゴースト・ストーリー(村)
〇バンデットQ(川)
 狼男アメリカン(川)
 アトランティック・シティ(川)
〇白いドレスの女(川)
〇レッズ(川)
 ラグタイム(川)
 誓い(村)
 ラゲッディーマン(村)
 センチメンタルアドベンチャー(村)
〇コナン・ザ・グレート(村)
〇ソフィーの選択
 氷壁の女(村)
〇ベストフレンズ(村)
〇ブレードランナー(村)
〇ダイナー(村)
 フィッツカラルド(村)
〇ヴィデオドローム(川)
〇遊星からの物体X(村)
〇ガープの世界(村)
〇ポルターガイスト(村)
 ブルーサンダー(川)
 スター80(村)
 ザ・ローリング・ストーンズ(村)
〇カメレオン・マン(村)
 銀河伝説クルール(村)
〇スカーフェイス(村)
〇フラッシュダンス(村)
〇ランブルフィッシュ(村)
〇ライト・スタッフ(川)
〇バッドボーイズ(川)
〇ホテル・ニューハンプシャー(村)
〇ストリート・オブ・ファイヤー(村)
〇スプラッシュ(村)
〇ハンガー(村)
〇アマデウス(村)
〇グレイストーク/ターザンの伝説(川)

映画ガイドとして役に立つのはもちろん、
春樹さんの前書きの文章が素敵だ。

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「映画をめぐる冒険」村上春樹・川本三郎
(講談社)

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映画をめぐる冒険
あの頃、あたしたちは
消費の海で途方に暮れていた。

あふれかえる情報とモノ。
それらは、なまめかしく、あたしたちを誘った。

ふりかえると、
それは
「カタログの時代」だったんじゃないかと思う。

例えば、服。

貧乏な学生にも
いくらでも働き口はあって、
少し頑張ってバイトをすれば、
デザイナー、キャラクターズ・ブランドの服にさえ、
手を伸ばすことができた。

だけど、
このあいだまで、
学校では制服、家ではジャージ(笑)
休みの日のデートや友人との遊びに
ほんの少し、お洒落する程度の高校生、
百貨店やファッションビルなんて
30分電車に乗らなきゃないような田舎に住んでる高校生
だった若者たちに、
「自分に似合う服」「自分のスタイル」なんて
簡単に自力で見つけられるわけもなく(笑)
「流行」「トレンド」なるものを
教えてくれる雑誌やカタログが
生物や日本史のかわりに、教科書になったのだ。

そして、誰もが「にわか都会生活者」のスタイルを身につけていくと、

服や時計、靴や鞄の次は
「知」がファッションになった。

これはお洒落上級者の
ちょっとひねったアクセサリーの一つでもあったし、
はなから自分を飾るお金もそのつもりもない貧乏学生、
そして真に知識を求める一部の若者にとっても、
自尊心をくすぐる魅力的な装いだった。
カタログやガイドブックを片手に
それぞれの動機で、
結構、真摯に本や映画を一生懸命求めた頃があったのだよ。

この本は、ある意味、
知識や教養さえもカタログ化される、
そんな時代の遺物とも言える。

時を同じくして、
一世を風靡したニュー・アカデミズムの舞台となった
雑誌『パイディア』(竹内書店)を創刊し、
中央公論社に移って、『海』で、塙嘉彦、村松友視とともに伝説的な黄金時代を築き、
売れ行き不振で廃刊直前の『マリ・クレール』
「特集:読書の快楽」で完売させ、以後

「特集〇〇」「~のベスト〇〇」

というかたちの数々の企画やガイドブックを仕掛けた
自称「スーパーエディター」「天才ヤスケン」こと
安原顯(やすはらけん)のプロデュース本だからだ。

まだ、「自らが村上春樹の才能を発掘した」という
ちょっぴりビッグマウスが通用した
安原顯と春樹さんの蜜月時代(つーか普通に親交のあった時代)に
に作られた本。
(後に、突如、ヤスケンは村上春樹批判にまわり、
無断で持ち出した春樹さんの生原稿を古書店に売却するという事件にまで
発展して決別することになるのだが・・・汗)

確かに、素晴らしいひらめきと才能を持つ編集者だったのだと思う。
多くの作家さん(大江健三郎とか)とのトラブルはあったが、
あたしも大好きな、吉本ばなな『TUGUMI』を『マリ・クレール』に連載したこと、
当時は版画家としか知られていなかった山本容子を挿画に起用し、
ベストセラーにした手腕はすごいし、
あたしが愛読していた本も、
彼の手がけたものがいくつかあるし。

たぶん、そういう編集者としての力を持ちながら、
あくまでも他人のプロデュースではなく
自分自身が「書く人」でありたかった彼の葛藤が
様々な不運な出来事を呼び寄せてしまったのかもしれないね。

この「映画をめぐる冒険」
村上龍との対談集「ウォーク ドント ラン」と並んで、

春樹本コレクターの関所と言われるくらいレア本になり、

どれだけ復刊リクエストがあっても
再刊も文庫化もされない、
というのは、この春樹さんとヤスケンの確執?が理由と思われる。

それはとても悲しいことだけど、
春樹さんファンとしては、
映画への思い入れのたっぷり詰まった楽しいこの本を
世に出してくれたことへの感謝もあるから、
なんだか複雑な気持ちだ(泣)

<詳しい内容は後編へ続く>
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ぺんぺん

Author:ぺんぺん
古本ぺんぎん堂店主
☆成分分析:
ぺんぺんの90%は本でできています
残りは音楽と映画と酒と美味しいものでできているようです

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