ぺんは、日本史はまだしも
世界史はあまり詳しくないため
はまれる歴史小説って、そんなに多くはないけど
佐藤賢一は好き
本を読む楽しみってやっぱり
物語の中で、
場所と時空を超えられることだよね?
史実に忠実でありながら
魅力的に味付けされたキャラクター造形
長編でも読むのに苦痛を感じさせない文体で
予備知識がなくても楽しめる彼の作品は、すごくいいと思う
直木賞受賞作の
『王妃の離婚』十三世紀フランス南部を舞台に異端カタリ派の興亡を描いた
『オクシタニア』古代ローマの剣闘士奴隷の波瀾万丈の人生を捉えた
『剣闘士スパルタクス』や
最近では
「デュマ三部作」など
ヨーロッパを舞台にすることが多い作家さんなんだが
「アメリカ」に初めて挑んだ作品がこれ
禁酒法時代のアメリカを舞台に
第一部は
「暗黒街の顔役」アル・パチーノ主演の映画
「スカーフェイス」など
数多くのギャング映画でモデルとなった
シカゴ暗黒街の帝王であり、時代のシンボルでもあった
アル・カポネ(1899-1947)の視点で
第二部はテレビドラマやケビン・コスナー主演映画
『アンタッチャブル』の主人公として「正義」の象徴となった
エリオット・ネスの視点で
それぞれの人生をリアルに鮮やかに描いた物語
悪と善。対照的に見える2人が、ともに求めたものは何だったのか?
今まで表面的に
一方が悪の権化、もう一方が正義の象徴という描かれ方をしてきた
カポネとネスのコインの裏表のような共通点を軸に
これまでの彼らのイメージを覆すような
映画では描くことの出来ない踏み込んだ内面描写が特徴かな
フィクションの世界では30代、40代のイメージで
正義は正義、悪は悪と
きれいに分かれたキャラクターができ上がってしまっている
カポネとネスだけど
実際に活躍したのは20代と年齢的に若く
人間として成熟しきってはいなかったのでは?
という部分に着目し
ともに移民であり、いろいろな葛藤を抱えた人間としての彼らの
等身大の人間像を描こうとした試みがユニーク
それを象徴するエピソード
ひとつは・・・
ビジネスマンとしてのカポネ中退前の学校での成績は良く
ジョニー・トリオに取り立てられた頃は
ギャング的な押し出しより
任された店の経理面で活躍していたり
一時期はアイルランド系の嫁と
普通のサラリーマンとして生活し
裏社会から距離を置こうとしていたあたりや
若気の至りの喧嘩で
「スカーフェイス」と呼ばれる傷のある顔になってしまったことを
「このままでは真っ当な社会人としてやっていけないかも」(?)みたいに
結構、気に病んでたりするのがおもしろい
また、ネスは
決して完全無欠のヒーローではなく
若さゆえの正義感で
FBIで活躍する
「かっこいい俺」を目指し
なんとか、もぐりこんだものの
禁酒法時代の仇花みたいな部署で・・・
結局、正攻法ではなく
「なんでもいいからカポネをあげろ」みたいな上からの圧力に屈して
脱税容疑でしかカポネを起訴できなかったことに、じれじれし
その後は結構こすっからく「アンタッチャブル」としての名声を利用して
世渡りしようとするも失敗して
アル中として不遇の人生を送る、わりかし
情けないキャラなのも新鮮(笑)
アメリカという国を読み解くための書物でもあるところも興味深い
激しく好悪の別れる国であり、様々な
二面性を持つ国アメリカ
カポネたちギャングが出てくる素地であった
伝統やしがらみ、封建的な因習から逃れている若い国でありながら
禁酒法なんていう突発的にスクエアなものを
法律にして大真面目に適用し
純粋とも危険とも言えるやり方で
「正義」に固執するアメリカの怖さ
(脱税で懲役11年ってありなのか?笑)
はテロ問題がらみで現代でも、問われている部分だし
怪物みたいなアメリカの
「メディアによって喧伝されるカリスマ性の虚実」も
テーマにされているところが、おもしろいと思った

「カポネ」佐藤賢一(角川書店)