生涯一書痴! 病高じて古本屋の店主になってしまった、ぺんぺんの読書日記です。書評ってほど偉そうなものではないですが(汗)読んで楽しかった本、いろいろ考えた本を紹介したいです
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竜崎伸也、四十六歳、東大卒。
警察庁長官官房総務課長。
連続殺人事件のマスコミ対策に追われる竜崎は、
衝撃の真相に気づいた。
そんな折、竜崎は息子の犯罪行為を知る――。
保身に走る上層部、上からの命令に苦慮する現場指揮官、
混乱する捜査本部。
孤立無援の男は、組織の威信を守ることができるのか?

全然、新人じゃないと思うが(爆)
第27回 吉川英治文学新人賞受賞作(笑)
賞の名に恥じない作品だ。

ユニークな点がふたつ。

ひとつは、帯の「新・警察小説」という名の通り、
従来の警察小説とは全く、違う視点で描かれていること。

「事件は会議室で起こっているんじゃない!

現場で起こってるんだっ」


踊る 大捜査線」で有名になった青島刑事のこのセリフ。
現場で捜査にあたる刑事の地道で緻密な働きと
キャリアである上司の無理解や勝手な思惑との対立。
「警察小説」の王道といえば、これだよね(笑)
横山秀夫や、先日取り上げた雫井脩介の「犯人に告ぐ」
こういうタイプで、警察小説好きを釘付けにしている。
ところが、この小説では、現場の捜査の詳細はあまり重要ではない。
つーか、

「事件は現場で起こってる!

でも、会議室では、

とんでもないことが起こってるんだっ!」


という感じ?(笑)

よく、警察小説に登場するキャリアは
警視庁捜査〇課の警視だったりするけど
まだ、この段階では下っぱーと言ってもよい(らしい?)
国家公務員Ⅰ種試験に合格し、警察庁に採用された国家公務員が
キャリアであり、
警察庁とは、国家機関で、全国の都道府県警察を束ねているところ。
犯罪捜査などは行わず、警察行政や全国の都道府県警に関する事務や
国会答弁に関する資料の作成など政治とも深い関わりをもつ。
一方、警視庁東京の警察本部で、
東京の治安維持や犯罪捜査などにあたっており
埼玉県警察本部や神奈川県警察本部というような県警本部と
位置づけは同じで、
当然、警察庁の役職の方が
階級が上であることが多い。
竜崎が務める、警察庁での課長職というのは
県警なら本部長、本庁(警視庁)でも部長クラスに相当する
エリート中のエリートなのだ。

一見、無関係に思えた複数の殺人事件。
その被害者は、過去の凶悪な少年犯罪の加害者だった・・・
関係者の復讐か、それとも偶然か・・・
センセーショナルな大事件に発展しかねない出来事に
警察全体のマスコミ対応を取り仕切る役割である竜崎は
ついに、警察機構を揺るがす最悪の事態を察知する・・・
キャリア対キャリアの目に見えない戦いが始まる。
彼は自分の信じる社会正義を貫きとおすことが
できるのだろうか・・・
普通の警察小説では表に出てこないキャリアたちの
壮絶な仕事ぶりと情報戦が、息を呑むような緊迫感をかもし出す。

もう、ひとつは主人公のキャラクターだ。

竜崎伸也。
絵に描いたようなキャリア官僚。
有名私立大学の入試に受かった息子を、
東大以外は大学ではない」と浪人させる。
娘の縁談について妻から相談されれば、
俺は国のことを考える。おまえは家のことを考えてくれ
と真顔で言い放つ。

こんなおっさん、ダンナだったら嫌だし

親父(父親)だったら、もっと嫌!!(笑)


と、読者はいきなり、どん引くこと間違いなしだ(爆)

国家を司る官僚に純粋な使命感を持ち、
キャリアであることのプライドに満ちた、キャリア官僚。

読む進むうち、読者は
最初の印象とは異なる
彼の不思議な魅力に惹きつけられていくだろう。
それは彼の信じるエリートが、
権利だけではなく義務を併せ持ったものであり
彼が出世を望むのは、
より高位の権力を手に入れることで
彼が信じる社会正義を貫き
国民に奉仕する国家公務員としての役割を全うできる

本気で信じているからだ。

四面楚歌のキャリアの世界で
出世の階段を踏み外さないよう
慎重に行動し発言するのを旨とするかれだが
それは決して、私欲のためではないのだ。
ここまで、「エリート」であり官僚である自分に
矜持を持って働いている人間は、そういないはずだ。

彼は彼の言うところの「正しいエリート意識」を持っている。
ある種の驚きをもって、この嫌なおっさんの生真面目な働きぶりに
徐々に共感を覚え始めるころ、
身内の不祥事、そして、ついに犯人らしき人物の逮捕。
自分の倫理観と信じる正義
そして官僚社会の組織論と国家警察としてのあるべき姿

ふたつの狭間で最善を尽くそうとする彼は
いつのまにか
傷ついた孤高のヒーローにさえ見えてくるのだ。

このあたりが、著者のヴェテランとしての手練手管なのだろうが
それに素直に身をまかせて、楽しもう。

痛快なエンターテインメント小説だが
素材となる連続殺人を通じて、
いま、法律や報道の世界で
常に議論の的となっている少年法の問題を
扱っているのも今野敏らしい。

ラストに、思わず、くすり、と小さな笑みを
与えてくれるような余韻があり
これは、まさか続編への含みじゃないよなあ・・・
あれば、いいなあ
と思ってたら
なんと2007年4月に続編
果断 隠蔽捜査2」が出たらしい。
読まなきゃ(笑)

inpei.jpg

「隠蔽捜査」今野敏(新潮社)

今野敏の本
「ST警視庁科学特捜班」
「ST警視庁科学特捜班 毒物殺人」
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神奈川県警は、全く手がかりがつかめない連続児童誘拐殺人事件
手をこまねいていた。
万策尽きかけていたそのとき、
打開策としてTVメディアを使って犯人に直接呼びかけを行い
犯人の反応を待つという前代未聞の捜査方法が提案され
大衆の前に立つ広告塔として、白羽の矢が立てられたのが巻島である。
彼は過去に、児童誘拐事件の捜査に失敗し、
その後のマスコミ対応でも失態を演じたために、
左遷させられていた刑事。
かつて自分の身を破滅させたマスコミを手なづけ、
事件を解決しようと試みる巻島の苦闘と
個性的な登場人物たちの思惑が複雑に絡み合いながら進行する
“劇場型捜査”を、
圧倒的な臨場感で描く異色の警察小説

もちろん、ミステリーに分類していいタイプの本だと思うし
実際、2004年度のミステリーでは
国内ナンバー1に選ばれたりしてるんだけど
むしろ、普段あまりミステリーを読まない人に
おすすめしたい作品。
トリックで読ませる小説でないし、大きな仕掛けがあるわけでもない。
でも、とにかく、「人間」がきっちり描かれていて
そのリアリティと心情への共感で、物語にあっというまに取り込まれてしまう。

本を読みなれていない人は、たぶんドン引く
370ページ2段組のヴォリューム(笑)
でも、だいじょぶ!
とにかく読み始めてみよう
きっと、ページをめくるのがもどかしいくらいのスピードで
物語があなたを運んでくれる。
震えるような結末へと。

まずはテレビを使っての劇場型捜査という設定がいい。
これに関しては、荒唐無稽とか、「ありえねー」的な
感想もあると思うが
怨恨などではなく、何の共通点もない男児だけを狙っての誘拐殺人
自らをバットマンと名乗る犯人
典型的な劇場型犯罪(演劇の演出のように、マスコミを通じて大衆に知られる際の、
効果への狙いを感じられる犯罪)に対して
自尊心をくすぐること、挑発すること、動揺を誘うことを
目的とした劇場型捜査は有効であり
漫画『DEATH NOTE』
L(エル)がキラの犯人像をしぼるために
テレビで呼びかけたシーンと同様
充分にリアリティが感じられた。
日本で劇場型捜査が行われる日はそんなに遠くないかも。

そして、キャラクター造形と人物描写の上手さに
引きこまれる。
主人公、巻島はエリートコースからはずれた
アウトロー的な敏腕警視という
この手の警察小説では
それほどめずらしい設定ではないが(大沢在昌の「新宿鮫」の鮫島とか)
大きな失敗の後のある種の諦観を漂わせつつ
表にはあらわさない諦めきれない何か
刑事として忘れてはならない何かを胸に抱き
意地と覚悟と矜持を持って
自らの仕事をまっとうしようとする揺ぎ無い意志が
巻島というキャラクターに強いオーラをまとわせる。
巻島だけでなく、
彼を支える温厚で人の痛みを解する「津田長」こと津田刑事や、
老練なニュースキャスター、
多くを尋ねたりせず、朗らかな気性で家庭を守る巻島の妻
チョンボの名を冠したダメ刑事
現場の人間をコマのように、事件を他人事のようにしか感じられず
捜査情報を好きな女性の気を引くための道具に使う歪んだキャリア管理官
そして被害者と被害者の家族
など
多くの登場人物の個性がくっきりと描かれていることが
物語に厚みとリアリティを与えている

そして何より、この物語の面白さは
重層的な構造だろう。
巻島が闘う相手は一人ではないということ。
至上の目的は犯人逮捕であるが
捜査は単なる正義と悪の対決だけでは終わらない。
巻島はすべてを賭けて犯人と対峙する前に
別の大きな敵とも闘わないとならないのだ。
警察機構と獰猛なマスメディア・・・
この強大な<組織>はある意味で犯人以上に厄介で
ただ一人で孤独な闘いを強いられる巻島の姿に胸が苦しくなる。

警察>においては
一部のエリートを中心とする独善的な采配
所轄同士のの連携の希薄さ
新型犯罪に対応しきれない旧型の捜査方式
私利私欲のためのリーク

テレビというマスメディア>においては
視聴率という数字がすべての他局とのあざといスクープ争い
一部の意見を世論へとすり替える意図的な情報操作
人権を無視した取材合戦

二つの組織の打算や思惑が入り混じり
いったい誰と闘っているのかわからなくなるような徒労の繰り返しの中で
ささやかな成果を繋ぎ合わせ
姿の見えない相手からの悪意」を
巧みにかわして少しずつ少しずつ、犯人へと近づいていく巻島。
けれど、日に日に彼への批判は高まり
残された時間は減っていく。

「バットマンに告ぐ
お前は包囲された・・・(略)

・・・今夜は震えて眠れ


ラスト近くの巻島の台詞で
あたしが震えました(笑)

現実の捜査同様、物語の中でも
早々、都合よく犯人は動いてくれない
ましてや、獅子身中の虫のごとく、警察内部から邪魔が入る・・・
すっかり作者の術中なんでしょうが(笑)
思うように進展しない捜査と
上手く行っていたと思われたマスコミ対策の中で吹き始めた逆風
上司からの最後通牒とも言える発言などで
巻島に感情移入すればするほど
読んでる自分も焦燥感のピーク(汗)

そこで・・・・!!

この本のタイトルの示す箇所であり
読者も、巻島と一緒に耐えて耐えて耐えて
最後の反撃が始まる合図
ここから、様々な伏線の解決があり
心理ドラマが怒涛のごとく最後の一行に向けて収束していくわけで
この台詞自体は
ミステリーにおける「お前が犯人だっ!」みたいなキメの言葉では
決してないんだけど(笑)
やっと、ここまで・・・
という、強烈なカタルシスはすごいです

今夜は震えてください(笑)

さてさて。
読んでる最中も映像が脳裏に浮かぶような作品で
書評なんかでも、
映画化されたら誰が巻島役を演じるのか
が話題になってたけど・・・

もう決まってるんだ!?(汗)

うおおおお

トヨエツかあああ
ちょっと若すぎないか???(笑)

映画「犯人に告ぐ」は、
WOWOWが設立した劇場映画レーベル「WOWOW FILMS」の第1弾として
瀧本智行監督、豊川悦司・石橋凌・井川遥・松田美由紀らの出演で制作
先日(6月24日)にWOWOWで一夜限定で先行放送され
今秋劇場公開だって
ちょっと観たい・・・

*おまけ*
その「WOWOW FILMS」の第2弾(2008年公開予定)は
先日、ここで紹介した「きみの友だち」(重松清)が原作
うむむむ、なかなか渋いセレクトだにゃ(笑)

hannin.jpg

「犯人に告ぐ」雫井脩介(双葉社)

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「ちょっと支店長、ふざけんじゃないわよ!」 

「あんたみたいな銀行員がいるから

銀行が誤解されるのよ!」


圧巻の事務処理能力と歯に衣着せぬ物言いで、
エリート銀行マンたちをも蹴散らす、究極の女子行員・花咲舞!
事務処理に問題を抱える支店を訪れて指導をし解決に導く、臨店指導。
若くしてその大役に抜擢された狂咲(くるいざき)こと花咲舞が
独特の慣習と歪んだ企業倫理に支配された銀行を「浄化」すべく、
今日も悪辣な支店長を自己保身しか考えぬダメ行員を

叱り飛ばす! 張り飛ばす!

雑誌「J-novel」連載の「狂咲舞のテラー日記」の単行本化で
銀行を舞台にした連作短篇ミステリー

舞は、最初の臨店から
コスト削減のために、ベテラン女子行員をネチネチといじめ、
退職に追い込む支店長にマジギレ。
その支店長が、次期頭取候補と目される真藤の派閥に属していたため
以来、行く先々で、真藤派の行員に嫌がらせを受けることになる。
だが、決して舞は信念を曲げたりしない。
彼女の物差しは非常に明確で
組織内の上下関係や派閥に関係なく
正しいか正しくないか、それだけ。
そして、何より、テラーとしての誇りと共に
彼女の視線がいつも、顧客の方を向いていること
ある種の感動さえ覚える。

そうだ、サービス業というのは
本来、お客様のための仕事だ。
そして、仕事は個人の生活の糧であり
生き甲斐や楽しみ、自分を育てるもの・・・であってほしい。
(外で働く人間は家庭で過ごす時間より
会社にいる時間の方がずっと長いのだから・・・泣)
でも、組織の中で、働く以上、
ときに、そこでの利害関係、人間関係が
顧客サービスや社員の人生よりも
優先されることが起こってしまう。

胸がつまるくらいに
共感を覚えた舞の台詞
「結局、ここには人を動かし、ときに狂わせるいくつかの物差しが同時に存在してる。
銀行の利益という物差し、そして派閥や個人的な私利私欲という物差し、
だけど私たち個人が幸せになれるか、本当にやりたい仕事ができるかという物差しは
いつだって後回し」


きっと誰にでもあるだろう
会社ってなんだろう?
誰のために働いてんだろう?

って思ったこと

きっと誰にでもあるだろう
それは違うんじゃないですか?
そんなことは自分はしたくない!

って思いながら飲み込んだ言葉

花咲舞が、この本の中で代弁してくれる
あなたの代わりに怒ってくれる

著者の池井戸潤が
自著紹介で
「女子行員というと、銀行では恵まれない職種なわけで
そういう弱い立場の人間が、
エリート行員たちをバッサリとやっつける。
そんな痛快な物語
を書こうと思って連載を続けました。」
というように
あの日、あのとき言えなかったことが
きっと、ここにはあると思う

すべての働く人に送るエール

元気がないとき、読んでみなっ!

hushouji.jpg

「不祥事」池井戸潤(実業之日本社)

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探偵や刑事は
「女には向かない職業」
(このタイトルはP・D・ジェイムズの小説)

もちろん、今は職業として
女性の探偵、女性警察官が活躍してるし
昔とはずいぶん変わってきてはいるんだろうけど
あたしがいうのは小説の中のこと

探偵モノでいえば、
女探偵キンジー・ミルホーン
サラ・パレツキーV.I.ウォーショースキー
以降、シリーズになるような魅力的な女探偵ってあまり見ない

日本では女探偵ものは少ないよね
若竹七海の描くクールな女探偵・葉村晶
桐野夏生村野ミロ

刑事まで幅を広げると
もう少しいるかなあ

乃南アサ
女刑事・音道貴子シリーズ

柴田よしき緑子(RIKO)三部作
(「RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠」「聖母(マドンナ)の深き淵 」
「月神(ダイアナ)の浅き夢」)

篠原涼子が
バツイチ、子持ち、大酒飲み、捜査一課検挙率No.1、
そして「無駄に美人」な女刑事・雪平夏見を演じて
「アンフェア」の名前で人気ドラマとなった
秦 建日子(はたたけひこ)の
「推理小説」「アンフェアな月―刑事 雪平夏見」

ずいぶん、読み応えのあるものが増えているとはいえ
男性が主人公のものにくらべたら多いとはいえない
もっと、もっと、読みたい

好きなんだあ(笑)
このジャンルが・・・
「危険の伴う仕事を選んだ有能な女性」
という物語が・・・

あたしにとって本を読むということは
物語の中でもうひとつの人生を生きることでもある
生まれたときにはきっと無限にあったかもしれない可能性
でも、ひとつ何かを選ぶたびに
道は少しずつ減っていって
もう今では引き返したくても
通行止めになってしまった道もある
限られた時間と限られた肉体
だからこそ、本の中では
自分が体験できない人生を生きてみたい

とろーい、ぺんには
刑事や探偵は縁遠い仕事だ(笑)
だから余計に、
女探偵や女刑事の魅力的なキャラクターに憧れる

おおっ、ひとつ発見!

姫川玲子、二十七歳、警部補。警視庁捜査一課殺人犯捜査係所属。
青いシートにくるまれ、放置されていた惨殺死体
彼女の直感は、次々と発見される無残に破壊された人体が暗示する
底知れない悪意にせまることができるのか?
やがて、現れた一本の糸・・・
殺人ショーへの招待状であるという
謎のサイト「ストロベリーナイト
緊張感いっぱいの描写で疾走する警察小説。

姫川は、できる女だ
20代後半でノンキャリアながらすでに警部補
階級社会を逆手にとって
地位を有効に使い、
女性としての魅力も積極的にではないが上手に利用する
それでも決して嫌味なところがないのは
とにかく現場で、事件に向かうことにすべての情熱を注いでいるから

姫川には実は、犯罪の被害者になる、という
トラウマといってもいい過去があり
仕事を超えて傷ついた彼女を支えた女性刑事との出会いが
捜査活動、犯人逮捕への強いモチベーションになっているところに
説得力がある

同じ作者の作品に
「ジウ」三部作というシリーズがあって
こちらも警視庁を舞台に
二人の対照的な個性の女性警察官を主人公にしたサスペンス

これからも
魅力的な女性の活躍する警察小説の期待できそうな作家さん

strowberry.jpg

「ストロベリーナイト」誉田哲也(光文社)

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どういうめぐり合わせなのか
ここのところ
図書館でセレクトした本が
どろどろぐちゃぐちゃ
ホラー・ミステリーばっかで
(笑。ここには書いてないけど真梨幸子の「孤虫症」とかも)
本の選択基準は
もともと好きな作家さん以外は
単に気分・・・というか
タイトルやカバーの装丁で手に取ったり
シックス・センス?(笑)つーか
本に呼ばれる感覚だったりするんだけど
バイオリズムなのか何なのか
同系統のものが重なる不思議

いくらなんでも
爽やかなやつを、そろそろ・・・(汗)
と思ったら、タイミングよく当たりを引いたぞ(笑)
気持ちのいい読後感のミステリー

「霊導師 能城あや子」
バラエティ番組の中のほんの一コーナーで
初めから下調べつきのヤラセで引き受けた「霊視」
別のヤラセがばれてプロデューサーが辞職した後も
なぜだか継続されることになり
「the TEAM」が本格的に始動する!

盲目で難聴の霊能者、能城あや子
マネージメント業務全般を取り仕切る鳴滝昇治
盗聴やハッキングを駆使しての情報収集担当・藍沢悠美
尾行や、家宅侵入など体を張っての調査担当・草壁賢一

霊なんて、見えやしないけど
探って、調べて、考えれば
真実は視える!?


あや子と彼女を支える仲間たちが
霊視相談者から持ち込まれる
過去の事件の真相と不思議な事象の真実を
抜群の調査能力とチームワークで
次から次へと暴き出していく痛快なミステリー

4人という、こじんまりしたチームではあるけど
それぞれの能力をいかした調査の描写がいいし
インチキ霊能者を暴こうとする記者や
過去に因縁のある男から
あや子を守るための駆け引きの
コン・ゲーム的な面白さもあって
ハッカー小説の好きな人や
「オーシャンズ11」みたいなチームもの?(笑)
の映画が好きな人にも楽しめるかも

一編ずつでも楽しめる連作短編のかたちをとっているが
相談者の事件解決のあいだに少しずつ明らかになる
メンバーの過去や経歴も興味深い
あや子と鳴滝の関係はこの作品の中で語られているが
賢一と悠美がメンバーになった経緯など
まだまだエピソードは残っていそうで
続編が出る可能性、大?

井上夢人
言わずもがなだけど・・・
「岡嶋二人」の名義(徳山諄一との合作)で
乱歩賞までとってる作家さん
岡嶋二人の活動休止後、井上夢人の名前で作品を発表
ホラー、SFテイストのものなど
毎回いろんなことに挑戦してる姿勢がなかなか素敵で
この「the TEAM」のような
ユーモアがあって、ちょっとほろりなミステリーは
読んでて楽しいもののひとつ

theteam.jpg

「the TEAM(ザ・チーム)」井上夢人

テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

若い女性が突然、路上に飛び出し、車に轢かれて死亡した。
事故と他殺が疑われたこの事件は、
被害者の特異な容貌から別の注目を浴びることになった。
興味を持った女性ライターが取材を進めると、
同じ地域でまた新たな事件が起こる。
真相に辿り着いた彼女が見たものは―。
かつてない犯人像と不可思議な動機とは・・・

んんん。
これは倒叙型ミステリーに分類したらいいのかなあ
犯人は最初から、バレバレだし・・・(笑)
っつーか別に隠してないし
むしろミステリーというよりサイコ・ホラーなのか?
と思った

お金にもそこそこ恵まれ
妊娠中でしあわせいっぱいのおっとりした主婦
殺人という言葉からは最も遠く思えるキャラクター乃ノ香

対するは
男性社会の中でなんとか才能を発揮したいと思い
自分だけの記事を書くため
真相を追うライター多恵
ふとした興味から取材をはじめた事件
そして不思議な偶然から
事件が起こった場所以外は共通点がなく
警察でさえ関連づけていない別の事件にも共通する犯人像に
気付いてしまった彼女は
特ダネという名誉欲だけでなく
おさえがたい好奇心にかられて、乃ノ香に接触する

都会生活の中の不快なことがら
(通勤や外出の電車でのマナーの欠如や
ちょっとした無礼
近所のなんだか変で迷惑な人)という
身近な出来事を通じて
平凡に見える人間の心の中のどろどろな悪意と
それが殺意に簡単に結びついてしまうサイコっぷりを描いた見事な心理描写
警察捜査の手順ではなく
取材を通して知り合った「お友達」というスタンスで
女性ならではの観察眼で
細かな証拠から
次第に犯人の確証を深めていく過程がおもしろい

自分の身に迫る危険を知りつつ
互いに探り合う女同士のバトル
こ、こわい・・・

ほとんど、サイコホラーに軍配が上がりかけた
最後の最後で
ああ、やっぱ、これ、ミステリーだったんだ
という衝撃の結末
ありふれて見えた短いタイトル「ダブル」の意味が
ずし~~~~ん
とした読み応えを心に残す

最後のこの、ひとひねりが
並みのストーリーテラーではなかなかできないかも?

double.jpg

「ダブル」永井するみ(双葉社)

永井するみの本
「ボランティア・スピリット」SOLDOUT

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生後五ヶ月の娘の目の前で惨殺された妻・祥子
犯人は、十三歳の少年三人
少年犯罪であるため、
もちろん犯人は裁判にかけられることもなく
被害者の家族には犯行の理由さえ知らされることはない
悪夢のような出来事から
娘のために何とか立ち直ることだけに
日々を費やしてきた夫・桧山貴志
四年後、犯人の少年の一人が殺され、桧山に容疑が・・・?!
彼は目をそむけようとしてきた現実と向き合うことに
そして、彼の知らない妻の過去が・・・

う、う、上手っ!!
伏線が見事に生かされ
最後の章の驚きの結末
うは~~~すげー
というのが第一印象

でも、再読すると
ミステリー構築のテクニックだけでなく
改正少年法施行前の犯罪を主題に
被害者や遺族の感情を丁寧に描いていること
また、被害者側の視点だけでなく
「更正」や「贖罪」という部分にまで
踏み込んでいることで
様々なことを考えるきっかけとなる深い内容になっている

特徴的なのは
不幸な偶然の果てに
被害者でもあり加害者でもある>人物
が複数登場することか

実際、犯罪というのは
人の感情や欲やいろんなものが連鎖した結果に生まれるもので
一つの悪意の芽生えたところには
別の黒い種が生まれたりもするだろう

また、悪意だけではなく愛からも犯罪は生まれてしまうのだ
悲しいことに

突然、大切な人をなくしたら
殺した相手を許すことができるのか?

理不尽な暴力や心の痛みから
愛する人を救うために、原因を排除しようとしても
やはり、それは罪なのか?
(これは東野圭吾「容疑者Xの献身」のテーマです)

被害者も加害者も傷ついている
そして、その家族も
だからこそ
「報復」という連鎖をどこかで断ち切ることができないか・・・
という強い願いがこめられた作品だと思う

ミステリーとして完成度の非常に高い作品でもあるし
また、少年犯罪少年法について
興味のある人にも
フィクションではあるけど
問題点を明らかにするための
「被害者側の立場」を知るものとして役立つ

できれば、これとあわせて
真保裕一「繋がれた明日」
読むといいかも・・・
こっちは「加害者の立場」

「ミステリという物語の多くは、犯人が逮捕されて事件が解決し、それで終わる。
だが、現実の殺人は、犯人が逮捕されたからといって、
すべてが解決するわけではない。
被害者、並びに加害者の身内は、
癒えない傷を抱えて先の人生を歩んでいかねばならない。
当然ながら罪を犯した当の本人にも、過酷な現実が待ち受けている。
そして、彼らの多くは、刑期を終えれば、我々の社会に戻ってくる。」
(真保裕一)
作者の言葉のとおり
人を殺してしまった男に明日はあるのか?
19歳で殺人を犯し、26歳で少年刑務所を出た主人公が、
「俺は殺そうとしたのではない!」という消えぬ思いと、
失われた命に対する懺悔 の念に揺れ動きながら
世間の厳しい視線の中で生き抜こうとする姿を描いた作品

どちらかに偏るのではなく
できるかぎり公正な立場で
これ以上、悲しい出来事が起こらないように・・・
もしも、起こってしまったときに
被害者の、加害者の(家族の)その後の人生が
損なわれないように
考えていくことが、できるだろうか、あたしたちは

20070501155523.jpg


「天使のナイフ」薬丸岳(講談社)

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ぺんぺん

Author:ぺんぺん
古本ぺんぎん堂店主
☆成分分析:
ぺんぺんの90%は本でできています
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