仕事多忙のため、不覚にも3月に発売になっていたのに気付かず
先日あわてて入手
一日で読了
(う・・・こんなに待ったのに・・・もったいなかった。笑)
読後の、ざっぱーな印象は二つ
■こりゃまた、好き嫌いの分かれる作品だなあああ
■海外作品読んで、初めて日本人でよかった!と思った・・・です(笑)
ひとつめ
これは・・・
「ハンニバル」のときも言われたことだ
確かにね・・・
「羊たちの沈黙」(
「レッド・ドラゴン」もだけど)がある意味すごすぎた
FBI捜査官が、連続殺人犯を
プロファイリングしていく過程の緻密な描写と
息詰まるような犯人との対決の緊迫感
という現代人が最も好むタイプのミステリーの要素
(これは
ジェフリー・ディーヴァーの近年の人気作
「
リンカーン・ライム」シリーズにそっくりそのまま当てはまる)と
犯人バッファロゥ・ビルそして捜査官(訓練生)クラリスの心理を
稀代の<怪物>ハンニバル・レクター博士が
解き明かすサイコ・サスペンスの要素が
絶妙にからみあい、極上のエンターテイメントとして
決して忘れられることのない足跡を刻んだ作品だから
「ハンニバル」では7年後のレクター博士と
FBIで窮地に立たされたクラリスの再会
レクターを執拗に狙う復讐鬼との対決などが描かれ
猟奇的な描写と、妖しくも美しいロマンスが圧巻だが
これをあくまでも「羊たちの沈黙」の
続編として
いわゆる「ミステリー、サスペンス」の枠内で
期待していた人は、多分期待はずれだったのでは?
この「ハンニバル・ライジング」にも同じことが言える
「ハンニバル」で明かされたレクター博士の過去を
さらに幼少期の克明な描写で補い
あの素晴らしい「
記憶の宮殿」の源
優雅な
美意識の誕生の過程
カニバリズムの芽生え
彼がいかにして<人間>から<怪物>への変貌を遂げたのか
その心の動きを共有できる作品で
「羊たちの沈黙」の重層的な面白さはないが
ハンニバルが主人公のこの2作は、
「羊たちの沈黙」とは全く別の魅力を持つ作品なのだ
ハンニバル・レクターという「謎」をめぐる物語あたしのように
彼のキャラクターに、どうしようもなく
惹かれてしまう人間にとっては
捜査、復讐、逃亡、殺人・・・といった
ミステリー、サスペンスに必要な要素以上に
彼の頭の中を覗きたい、感情を理解したい
彼がいかにして<彼>になったかを知りたいという欲求が存分に充たされて
幸福感さえ感じた(笑)
読書の傾向として
「物語」を愛するか、
「人間」を愛するかで
捉えかたはずいぶん変わる、の好例かもしれないな
ぺんは、ストーリーの完成度よりも
キャラクターを愛するタイプだから
ふたつめ
外国文学を読んで
自分が日本人であることがマイナスであると
感じることなら、よくある
外国の地理、歴史、文化、宗教などに
造詣の深い人なら別だが
その文化圏の人間なら当然わかるような
冗談、比喩、常識があたしのような一般ぴーぽーには
理解できない、リアルに想像できない
多分、日本人には
「
ダヴィンチ・コード」の異端ぶりやセンセーショナルな部分は
キリスト教文化圏の人間ほどは驚きとはなりえないように
「ハンニバル・ライジング」では
レクターの少年時代に、のちの趣味嗜好に深く影響を与えた人物として
叔父の妻である
紫夫人が登場する
彼女は日本人で
この作品の中では
日本の文化が驚くほど、重要な役割を果たしているのだ!
著者トマス・ハリスの日本文化への理解は相当で
和歌、古典、歴史、美術などへの言及はどれも
いわゆる「フジヤマ、ゲイシャ」なチープな日本趣味とは
一線を画す高度なもの
(
ギブスンの「ニューロマンサー」のアキハバラとか
「ブレードランナー」の冒頭シーンとか
外国人のへんてこな日本趣味もある意味すげー面白いんだが)
これは日本人じゃないと、わからないでしょう???という
部分が多々あり
初めて、他の外国人読者より
日本人である自分の方が作品をより深く理解できるであろう
という喜びを得た
これが日本の作家なら当然のことなんだが・・・
トマス・ハリスでレクター博士だからなあ・・・・(笑)
びっくり、そして思わずニヤリ
レクターファンなら、楽しめる
GWの公開の映画もたぶん観るな、あたしは(笑)
どこに焦点を置いて撮るかでずいぶん出来は違ってくるとは思うけど

「ハンニバル・ライジング(上下)」トマス・ハリス(新潮文庫)
トマス・ハリスの本
「ハンニバル・ライジング(上下)」