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生涯一書痴! 病高じて古本屋の店主になってしまった、ぺんぺんの読書日記です。書評ってほど偉そうなものではないですが(汗)読んで楽しかった本、いろいろ考えた本を紹介したいです
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梶尾真治っていえば
やっぱり、タイムトラベルだよねっ!!

大ヒット映画『黄泉がえり』の原作者としての方が
今では有名なのかもしれないけど
デビュー以来、時間旅行テーマの短篇を得意としてきたSF作家

クロノス・ジョウンターの伝説
(ストーリーを変えて「この胸いっぱいの愛を」のタイトルで映画化
作者自身がノヴェライズした同名小説もある)
未来(あした)のおもいで」など
どれも、時を超えたロマンスを描いた優しい物語だ

タイムトラベル・ロマンス-時空をかける恋・物語への招待-
という書評エッセイで
海外SF作品、自作を含め
時間旅行への熱い思いを語っている著者が
このテーマで初めて本格的に長編に挑んだのが
この「つばき、時跳び」

主人公の新進作家・井納惇(いのうじゅん)は、
熊本市郊外・花岡山の中腹に位置し、
肥後椿の咲き乱れる「百椿庵(ひゃくちんあん)」に
たったひとりで暮らす。
祖父母の死後に譲り受けた家だが、そこにはかねてより幽霊が出る、
という言い伝えが。
ついに彼自身も屋敷の中で着物姿のうら若き美女を目撃。
てっきり噂の幽霊かと思うが、
「つばき」と名乗る娘は、明治維新直前、元治の時代から
百五十年の時を超えて現代へさまよいこんだ時間旅行者だった
どうやら、天井裏の梁に差し込まれた謎の金属棒で
この家自体がタイムマシンの役割を果たすらしい。
150年の「時の壁」を超える恋の行方は?
謎のタイムマシン発明者にして
未来からの旅行者「りょじんさん」とは?

展開は
いつもの梶尾節(笑)だけど・・・
時代小説、郷土小説の色合いもあり楽しい
何度も物語の舞台となってきた作者の住む熊本
横井小楠、長岡監物などゆかりの人物を登場させ、
名物「いきなり団子」の由来に触れたり
松本喜三郎の生人形
上手にエピソードに盛り込んでいる
人間、そして風景・・・
同じ場所での現在と過去の対比の描写がいい

タイムマシンの仕組みなどには
あまり細かくはふれられず
ディープなSFファンはもちょっとリアリティがほしいかも?
だけど
こむずかしい理論をふりかざしたりしない
親しみやすいタイムトラベルSFは
あまり、普段SFを読まない人にも楽しめる

あたしはタイムトラベルもの、大好き。
ハインラインの「夏への扉」
筒井康隆「時をかける少女」
ジャック・フィニイ「ふりだしに戻る」
広瀬正の「マイナス・ゼロ」

クリストファー・リーブ主演でロマンティクな映画にもなった
リチャード・マシスンの「ある日どこかで
SFではないけど北村薫の「時をめぐる三部作」もいいよね

時間旅行(時空漂流?)小説の中には
歴史には介入できないタイプのものもあるけど
あたしは、現在から過去(未来)へ
過去(未来)から現在へと
問題や謎を解決するためにさまよううちに
ある行動の結果が、人やものに影響して
原因と結果がわけわかんなくなった時の輪の中で
とにかく
愛する人に会いたいとか
あの出来事をなんとかしたい、
という強い気持ちが
しあわせな結末を呼び寄せるようなやつが好きだあ(笑)

そういう意味では
梶尾真治のタイムトラベルロマンスはツボかも

tubaki.jpg

「つばき、時跳び」梶尾真治(平凡社)
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よかった!また会えて

先日から、亡くなった彼への気持ちに少し整理がつき
作品を読み返すことができるようになったのだけど
遺作「酒気帯び車椅子」
絶筆の「ロカ」
以外に、まだあったんだ?!未発表の作品

この「君はフィクション」
彼が生前最後に手がけていた小説集で
亡くなった2004年7月26日の
ちょうど2年後(3回忌)に出版されたもの

光文社文庫のホラー系アンソロジー
「異形コレクション」
収録されている2作
「コルトナの幽霊」
(映画をモチーフに人間の恐怖の本質に迫った
めちゃめちゃ怖い作品)
「DECO-CHIN」
フリークスへの憧れと、至高の音楽を求める魂が奏でる
恐ろしくも美しい一品)

いまは品切れ本となっている
らもさんのデビュー作(自費出版を除く初単行本)
「頭の中がカユいんだ」から
あの懐かしの奇人変人話である
「東住吉のぶっこわし屋」

そして、
亡くなった時点では
単行本未収録だった
<ダ・ヴィンチ><青春と読書><小説すばる><文芸ポスト>
などの雑誌掲載作品

「山紫館の怪」
(落語的なオチのきいたホラー)
「君はフィクション」
(恋愛小説であり、多重人格もの
ラストが、とても、らもさんらしい)

ロッカー山口冨士夫にささげた
「ねたのよい」
「結婚しようよ」
は共に、自伝的で
70年代の音楽シーンの空気のつまった作品

「バッド・チューニング」
も音楽が主題だが
こちらは楽器になぞらえて人間の心理を描いたもの

そして
書き下ろしの未発表作
「水妖はん」
(民話的なおもしろさを持つホラー系作品)
舞台を知り尽くした彼らしいスラップスティックな
「狂言 地籍神」

あの、初期の頃の
暴走する浪花のお笑いエッセイ以外の
「小説家」としての中島らも
ひとつのジャンルにおさまりきらない魅力
多面的な才能
その全部が感じ取れる作品集で
読むたびに、いくつもの顔を見せてくれた彼の
全体像が見えるような気がする一冊

幻想、不条理、愛、笑い、恐怖、毒
そして音楽


もしも、まだ、彼の作品を読んだことのない人に
「中島らもってどんな作家?」と訊かれたら
この本を差し出すのが
もしかして一番わかりやすいのかもしれない

そして、ある意味
あたしが一番感動したのは
巻末の
中島さなえ「父のフィクション」
この作品の刊行にあたって
らもさんの娘さんである彼女が
作品への感想、現在の中島家、亡くなる前のらもさんの思い出
などを綴った短い文章だが
父ゆずりの明晰な知性、やわらかいユーモアが
すぐに感じ取れる
子どもが自分の親の仕事をここまで
冷静に愛情をこめて深く理解しているというのは
なんて、すごいことなんだろう!

いつも、何かに飢えているような
ひとつのことに満たされずに
どんどん先へ・・・先へと
走り続けているような彼の文章だけど・・・
「父」としての彼の人生はきっと
満たされていたんだろうな
それがわかっただけでも、よかった

kimihaficshon.jpg

「君はフィクション」中島らも(集英社)

中島らもの本
「さかだち日記」
「獏の食べのこし」
「微笑家族」
「輝きの一瞬」
「愛をひっかけるための釘」<文庫>
「愛をひっかけるための釘」<単行本>
「リリパット・アーミー しこみ編」
「頭の中がカユいんだ」
「僕にはわからない」
「中島らものばしっと明るい悩み相談室」
「中島らものつくづく明るい悩み相談室」
「永遠も半ばを過ぎて」
「今夜、すべてのバーで」
「らもチチ 私の半生 中年編」
「なにわのアホぢから」
「白いメリーさん」
「空からぎろちん」
「変!!」
「ガダラの豚2」
「ガダラの豚3」
「あの娘は石ころ」

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探偵や刑事は
「女には向かない職業」
(このタイトルはP・D・ジェイムズの小説)

もちろん、今は職業として
女性の探偵、女性警察官が活躍してるし
昔とはずいぶん変わってきてはいるんだろうけど
あたしがいうのは小説の中のこと

探偵モノでいえば、
女探偵キンジー・ミルホーン
サラ・パレツキーV.I.ウォーショースキー
以降、シリーズになるような魅力的な女探偵ってあまり見ない

日本では女探偵ものは少ないよね
若竹七海の描くクールな女探偵・葉村晶
桐野夏生村野ミロ

刑事まで幅を広げると
もう少しいるかなあ

乃南アサ
女刑事・音道貴子シリーズ

柴田よしき緑子(RIKO)三部作
(「RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠」「聖母(マドンナ)の深き淵 」
「月神(ダイアナ)の浅き夢」)

篠原涼子が
バツイチ、子持ち、大酒飲み、捜査一課検挙率No.1、
そして「無駄に美人」な女刑事・雪平夏見を演じて
「アンフェア」の名前で人気ドラマとなった
秦 建日子(はたたけひこ)の
「推理小説」「アンフェアな月―刑事 雪平夏見」

ずいぶん、読み応えのあるものが増えているとはいえ
男性が主人公のものにくらべたら多いとはいえない
もっと、もっと、読みたい

好きなんだあ(笑)
このジャンルが・・・
「危険の伴う仕事を選んだ有能な女性」
という物語が・・・

あたしにとって本を読むということは
物語の中でもうひとつの人生を生きることでもある
生まれたときにはきっと無限にあったかもしれない可能性
でも、ひとつ何かを選ぶたびに
道は少しずつ減っていって
もう今では引き返したくても
通行止めになってしまった道もある
限られた時間と限られた肉体
だからこそ、本の中では
自分が体験できない人生を生きてみたい

とろーい、ぺんには
刑事や探偵は縁遠い仕事だ(笑)
だから余計に、
女探偵や女刑事の魅力的なキャラクターに憧れる

おおっ、ひとつ発見!

姫川玲子、二十七歳、警部補。警視庁捜査一課殺人犯捜査係所属。
青いシートにくるまれ、放置されていた惨殺死体
彼女の直感は、次々と発見される無残に破壊された人体が暗示する
底知れない悪意にせまることができるのか?
やがて、現れた一本の糸・・・
殺人ショーへの招待状であるという
謎のサイト「ストロベリーナイト
緊張感いっぱいの描写で疾走する警察小説。

姫川は、できる女だ
20代後半でノンキャリアながらすでに警部補
階級社会を逆手にとって
地位を有効に使い、
女性としての魅力も積極的にではないが上手に利用する
それでも決して嫌味なところがないのは
とにかく現場で、事件に向かうことにすべての情熱を注いでいるから

姫川には実は、犯罪の被害者になる、という
トラウマといってもいい過去があり
仕事を超えて傷ついた彼女を支えた女性刑事との出会いが
捜査活動、犯人逮捕への強いモチベーションになっているところに
説得力がある

同じ作者の作品に
「ジウ」三部作というシリーズがあって
こちらも警視庁を舞台に
二人の対照的な個性の女性警察官を主人公にしたサスペンス

これからも
魅力的な女性の活躍する警察小説の期待できそうな作家さん

strowberry.jpg

「ストロベリーナイト」誉田哲也(光文社)

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料理マンガ大好きなぺんは
もう、ありとあらゆる料理マンガを読んでるけど
最近のお気に入りはこれだっ

福岡市内のイタリアンレストランで
アルバイトしつつ調理免許もとって、
将来は一流の料理人として恋人・恵理と店を持つこと夢みる
大学3年生の伴省吾
ある日、店のオーナーから、彼の弟分がオーナーシェフを務める
東京・六本木の店「バッカナーレ」のヘルプを勧められる
多少は腕に自信のあった省吾だが、
一流店の戦場のような調理場のペースに全くついていけず
"バンビーノ(ガキンチョ)"呼ばわりされてしまう
大学生活、恋人、故郷―大切なものをすべて置いて
「バッカナーレ」の厨房に飛び込んでいくバンビ
レストランという舞台で繰り広げられる
経営者、料理人、給仕、客の人間ドラマ

人が料理マンガに求めるものって、なんだろ?

まずは、知識・情報か?
食材や料理法の知識がたくさん得られるものは読み応えがある
物語の性格上、
一番多種の料理が紹介されてるのは「美味しんぼ」かなあ
フレンチを中心に多国籍料理なら「ザ・シェフ」「大使閣下の料理人」
中国料理なら「鉄鍋の醤!!」「おなかはすいた?」
寿司なら「将太の寿司」
ラーメンなら「ラーメン発見伝」「虹色ラーメン」
なんかもある
「華麗なる食卓」は身近なカレーにしぼったのがユニーク
多少マニアックだけど
料理の「」と凝りに凝った日本の美意識
感じたいなら「おせん」がいいし
魚のことを知りたかったら「築地魚河岸三代目」
家で作れるレシピ要素が大事だと思うなら
「クッキング・パパ」「貧民の食卓」
なんかがわりと実用的
実在の店の情報があってガイドブック的に楽しめるもの
も需要があるだろう

後は、感覚の再現
食欲というのは人間の本能の中でも
すごく強い欲求で
ヴァーチャルでもそれが充たされると気持ちいいかも
想像して、明日のランチは何食べようとか
考えたりするのも、きっと楽しい
読んでて、お腹が鳴ったり(笑)
口内に液体があふれてくるような表現力のあるマンガは
やっぱりいい

ここまでは、クリアしてる料理マンガはそこそこあると思うんだけど
ぺんが求めるのはやっぱり筋立て(ストーリー)

青年誌に多いのは仕事系職人系?
仕事系は新聞社や商社など仕事の一部として
料理を取材、研究するというようなタイプ
「美味しんぼ」「ラーメン発見伝」など)
これは非常に安定して読めるものだけど
長くなると少しマンネリ化するのが欠点か
職人系は仕事として料理にたずさわる人間を主人公にしたもの
「ザ・シェフ」「大使閣下の料理人」など)
これは食べる人の人生にかかわるドラマもあるので
結構いいかも

少年誌に多いのはバトル系
古くは「包丁人味平」から
「ミスター味っ子」「将太の寿司」「鉄鍋の醤」「虹色ラーメン」など
やっぱり料理コンクール、料理対決などで
ライバルと闘いながら、主人公が成長していく姿を描く
というのは変わらぬ少年マンガの基本なんだろう
この系統では、料理マンガなのに格闘要素まで入り
人死にまで出てしまう、すげー本気バトルの
「真・中華一番」が変り種か(笑)
これは料理もすごく凝っていて
新しいものを生み出そうとする意欲、前向きな主人公がよかったなあ

でも、一番好きなのは・・・
「お店もの」???
マイナーな少女マンガだが「半熟レストラン」
大好きな槇村さとるの「おいしい関係」
ギャグでは佐々木倫子の「Heaven?」
青年誌では「おせん」
途中からバトルに傾いたけど前半の「将太の寿司」とか
作るだけ、食べるだけじゃなくて
仕入れ、利益というようなことまで含めた店の経営
供する器や店の雰囲気、
美味しく食べてもらうのに欠かせないサービス
職場での先輩後輩、上司と部下の人間関係
男女がいれば恋の話
そして、お客様との関係
そういう人間のドラマを描くには
「店」「レストラン」を舞台にしたものがいいと思ってた
業種は違うけど、自分が店をやってるせいもあるかも(笑)

「バンビ~ノ!」
まさに、全てを満たした料理マンガだ

イタリアンだけの話はめずらしいし
レストランのあらゆる部分が詳細に描かれていてリアリティ抜群
キャラ立ちもすごくいい
とにかく料理を作りたくて仕方がないバンビだけど
最初は皿洗い、次にサーラ(ホールの接客係)
やっと厨房に戻ったら、今度はドルチェ室???
遠回りにあせるバンビ・・・でも確実に成長してる

「いいプロになれるのは
どんな奴だか知ってるか?
作る側。
受け取る側。
その真ン中に心根をおける奴だ」


鉄幹(オーナーシェフ)なーいす!

すべての仕事の基本だ。名言だ。

これからが、めっちゃ楽しみ
早く続き出ないかな(笑)

bambino.jpg

「バンビ~ノ!」<1~8巻刊行中以下続刊>せきやてつじ(小学館ビッグスピリッツコミックス)
(2009年5月に全15巻で完結。
2009年夏より「バンビ~ノ!SECONDO(セコンド)」として再開予定。)

商品の詳細データを古本ぺんぎん堂で見る
「バンビ~ノ!(全15巻)せきやてつじ

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好きな作家に対する読者の思いって
どんな感じなんだろう?

本を読んでるあいだは
精神まで同化したような気分になっても
普段はブラウン管の向こうの芸能人や何かと同じで
会うことはない遠くの人
自分の人生とは関係のない人
かな?

あんまりにも好きで
この本は私のために書かれたんだ」とか
彼女はオレにメッセージを送っている」とか
思い込んじゃう電波系の人(笑)でもなければ
そういう認識だよね

あたしは
本が出たら、もう発売されたその日に読みたいくらい
好きな作家は結構いるけど
あくまでも、それは彼らの文章が物語が好きなのであって
私生活にはあまり興味ないというか
実際に会ったら、どうだろう、とかさえ
想像もしたことない

でも、一人だけ
作家としてではなく
男の人として
この人に会いたい、一緒にいたい
と心から思った人がいる

中島らもさんだ

彼の事務所の近くに住んでたこともあったし
エッセイの中に登場する店などにも行ったことがあって
ほんとに、気がついたら
隣のテーブルに座っててもおかしくないような
身近な感じが手伝ってのことかもしれないけど
それをのぞいても
いつか絶対に会って、一緒に飲みたいと
強く強く願ったのは彼だけ

多分、あたしが大阪に住んで十何年のあいだには
100メートル単位でニアミスしたこともあっただろう
・・・でも、もう会えない

入院のニュースが流れた日のことは今でも覚えてる
その頃、彼は禁酒をやめて、かなり飲んでることは知ってたので
「まさか酔って階段から落ちたりしたんちゃうやんな?!」
と家族に話したことがそのままだった
彼は戻ってきてはくれなかった

この本は
2003年2月に大麻取締法違反などで逮捕された彼が
22日の拘留生活で
取調べ以外は誰ともしゃべれない独房の葛藤の中で
考えたことを綴ったエッセイ
大麻解放論、過去の記憶、書くことへの希求、
どこか冷静に状況を題材として面白がってる作家としての意識と
それでも、どこか拭いきれない不安と逼塞した状況への苛立ち
全部が愛しい

らもさんがいた大阪拘置所
家のすぐ近くで
壁の向こうに彼がいたんだと思うと
通るたびに胸が痛かった

吐息で白く曇った独房の窓ガラスに
3人の女性(一人は奥さん)の名前を書いた、らもさん
あたしの名前を書いてほしかったな

判決後の手錠サイン会
行けばよかった・・・

彼の著作はほとんど持ってるぺんだけど
実は
亡くなった直後から
この本を含め
買おう、も少ししたら読もう、と思ってたものは
読めなくなっていた

怖かったんだよ・・・
どうしても、彼がもういない、ということを
認めるのが嫌で
これを読んでしまったら
もうらもさんの新しい作品は出ない
ということを信じたくなくて

やっと、この頃
その事実と向き合う気持ちになってきた
本を開けば
いつでも、その当時の彼が活字の隙間に
生きているんだもの

できれば、たくさんの人に・・・
特に若い人に
この素晴らしく素敵な男の人の仕事を紹介したいって
やっと思えた

店(古本ぺんぎん堂)では
月替わりで通常の
文庫とか新書、コミック、雑誌とかいうジャンル以外にも
イベントをやってて
好きな作家の特集をやりたいな、って思ってた

今月は、らもさんにする予定
これからは泣かずに何度でも読む

rouya.jpg

「牢屋でやせるダイエット」中島らも

中島らもの本

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今日、図書館に返却する予定だから
メモしとこう

第15回の日本ファンタジーノベル大賞
優秀作受賞作ってことで
手にとってみた

別に賞の権威にはなんの興味もないぺんだけど
この賞は「後宮小説」(酒見賢一)に始まって
鈴木光司、北野勇作、畠中恵、越谷オサム・・・と
優秀賞でも、好きな作品にかなりの割合で当たってきたので
気になったわけだ(笑)

結論からいくと・・・

すごくストーリー性がある話ではないが
世界設定、描写がとても魅力的

です

何人かの登場人物の
一人称で描かれる連作短編で
すべての作品がリンクしているわけでもないのだが
全てが失われた場所で
唯一の希望である「象」をめぐる感情と
断片的に物語の中の「現実」を見せてくれるエピソードの集積によって
心の中で立体化する世界は
不思議で悲しくて、なんだか胸が苦しくなる

近未来?あるいは並行世界?である日本

戦争の結果なのか
詳しいことは語られないが
今よりはるかにテクノロジーが進んだ社会であったはずの日本は
この物語の中では
すべてを失った国」だ
首都の西の端は極東アメリカと呼ばれ
ごくわずかとなった日本の領土は
どうやら米中二大国に支配されているらしい
荒廃した東京に囲い込まれた人びと

近未来の東京は
「ブレードランナー」みたいな
繁栄の果ての退廃的な貧富が混在する都市じゃなくて
「ニューロマンサー」みたいな電脳都市でもなくて
敗戦後の闇市みたいな場所
強いて言えば
「武装島田倉庫」「アド・バード」「水域」という
椎名誠のSF三部作に近い世界観だ

どうやら、それがあの戦争の後ではなくて
未来だと言える様々なディティール
・・・不思議な合成食料や
庶民にはご馳走である養殖の天竺ネズミ
今では滅多に見るとこのできない「車」というもの
「木偶」と呼ばれるロボット?あるいはアンドロイド?の名残り
そういったものの描写が
とんでもなくリアルな悲しさを持っている

日本の象徴であった人びとの末裔が住んでいたという
「赤坂御用地」にたった一頭残された「象」という名の
不思議な生物への憧れを軸に
ここまで薄汚くて、ざらざらした手触りの
「もうひとつの日本」を描ききった力量は
すごいと思う

空想の世界で
今、あたしたちが生きている現実とは
まるで違う場所を生み出す力
それをあたしは愛してやまない

20070517084702.jpg

「象の棲む街」渡辺球(新潮社)

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リストラされた父親が姿を消した。
14歳 ケイ  →陸上部をやめて新聞配達
17歳 カナ  →いい子をやめて深夜までバイト
27歳 リュウ →急に家長の意識に目覚める
42歳 薫   →すっかり酒びたりになる
73歳 新造  →認知症が進行してしまう
いったい、この家族、どうなるの?


という帯のコピーそのまんま(笑)

陸上をやっている中学生の次男から
バトンリレーのように
それぞれの言葉で語られる「家族の物語

正直言って、第1話は、キツかった(笑)
ぐはー
若い~青い~
アングリー・ヤング・メーンっ!

<盗んだバイクで走り出しそうな>(笑)疾走感
いらだちまでもが感染する
このまま暴力、破壊の道へ爆走するの???
家族はさらに不幸のずんどこ?
暗黒系か?その路線はちょっと嫌~~
と思ったら
全然違ってた(笑)

とりあえず、最後まで読め!(笑)

そうか、中坊の語る物語は中坊の感情でしかないわけだ(笑)
あまりに文体と感情描写が等身大なため
中学生の気持ち
女子高生の気持ち
青年の気持ち
主婦の気持ち
じーさんの気持ち
それぞれに同化させられる一人称の魔法

バトンが渡されるたびに
語り手が変わるたびに
少しずつ姿を変えていく物語の中で
家族はそれぞれに心に何かを抱えているが
年齢を重ねるほど
感情、過去の記憶、秘密という荷物は重い
なのに隠し方は巧妙になる

もっと重くて暗い魂の叫び的純文学にもできる材料を
笑いでくるんだポップな文体
(じーちゃんの「味噌汁お代わり、シルブプレ」がツボ。笑)
「厭世」「フレーバー」であって
「厭世」そのものではないところがいい
実は、半分、あるいは全く血のつながりのない家族が
ゆるーく崩壊して
ゆるーく再生する

中途半端な感じが
より現実の人生に近い何かを、心の隅っこに残していくような読後感

本人は登場しないのに
家族の口から語られる失踪した父親の人物像がいい味
実は主人公はこの人なのか?(笑)
意味もなく豪快で
とりあえず「手が届く所にある世界は救っておく」男気と
はた迷惑な優しさ
あたしの好きなタイプだ(笑)
猫に「部長」と名付けるセンスも

家族ってなんだろう?
とか考えたりしたときに
「家族が何を思っているかなんて知る必要はない、
何をしているかだけ知っていればそれで十分」

という言葉は
ある意味、いい感じに脱力させてくれるような気がする
全部を抱えようとして動けなくなったら
思い出そう

うむむ・・・
なんか、最近すごくニュアンスの似た文章を読んだような・・・

いま、探したら、何日か前に
店の本に書くブックレヴューのために読み返したものだった

「家族というものは、もっとバラバラなものだと思う。
バラバラが健康な形だと思う。(略)
素晴らしい家族とは、それぞれの生き方で生きていながら、
共に生きているという感情を持ち続けている家族だと思う」

(山田太一『昼下がりの悪魔』)

ほんの一瞬かもしれないけど
お弁当を持って駅伝の応援に行く
「厭世フレーバー」の家族には確かにそれがあった
よせあつめみたいな、なりゆきで一緒にいるみたいな家族が
それでも、共に生きていくことを疑いはしない気持ちが

ensei.jpg

「厭世フレーバー」三羽省吾(文藝春秋)

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どういうめぐり合わせなのか
ここのところ
図書館でセレクトした本が
どろどろぐちゃぐちゃ
ホラー・ミステリーばっかで
(笑。ここには書いてないけど真梨幸子の「孤虫症」とかも)
本の選択基準は
もともと好きな作家さん以外は
単に気分・・・というか
タイトルやカバーの装丁で手に取ったり
シックス・センス?(笑)つーか
本に呼ばれる感覚だったりするんだけど
バイオリズムなのか何なのか
同系統のものが重なる不思議

いくらなんでも
爽やかなやつを、そろそろ・・・(汗)
と思ったら、タイミングよく当たりを引いたぞ(笑)
気持ちのいい読後感のミステリー

「霊導師 能城あや子」
バラエティ番組の中のほんの一コーナーで
初めから下調べつきのヤラセで引き受けた「霊視」
別のヤラセがばれてプロデューサーが辞職した後も
なぜだか継続されることになり
「the TEAM」が本格的に始動する!

盲目で難聴の霊能者、能城あや子
マネージメント業務全般を取り仕切る鳴滝昇治
盗聴やハッキングを駆使しての情報収集担当・藍沢悠美
尾行や、家宅侵入など体を張っての調査担当・草壁賢一

霊なんて、見えやしないけど
探って、調べて、考えれば
真実は視える!?


あや子と彼女を支える仲間たちが
霊視相談者から持ち込まれる
過去の事件の真相と不思議な事象の真実を
抜群の調査能力とチームワークで
次から次へと暴き出していく痛快なミステリー

4人という、こじんまりしたチームではあるけど
それぞれの能力をいかした調査の描写がいいし
インチキ霊能者を暴こうとする記者や
過去に因縁のある男から
あや子を守るための駆け引きの
コン・ゲーム的な面白さもあって
ハッカー小説の好きな人や
「オーシャンズ11」みたいなチームもの?(笑)
の映画が好きな人にも楽しめるかも

一編ずつでも楽しめる連作短編のかたちをとっているが
相談者の事件解決のあいだに少しずつ明らかになる
メンバーの過去や経歴も興味深い
あや子と鳴滝の関係はこの作品の中で語られているが
賢一と悠美がメンバーになった経緯など
まだまだエピソードは残っていそうで
続編が出る可能性、大?

井上夢人
言わずもがなだけど・・・
「岡嶋二人」の名義(徳山諄一との合作)で
乱歩賞までとってる作家さん
岡嶋二人の活動休止後、井上夢人の名前で作品を発表
ホラー、SFテイストのものなど
毎回いろんなことに挑戦してる姿勢がなかなか素敵で
この「the TEAM」のような
ユーモアがあって、ちょっとほろりなミステリーは
読んでて楽しいもののひとつ

theteam.jpg

「the TEAM(ザ・チーム)」井上夢人

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辞書の中には
一人の男の人が住んでいて
あたしはもうずっと、その人に恋をしている

彼の名は新解さん
三省堂新明解国語辞典
三版あたりに住んでいるらしい
女性に厳しく、でもロマンチストで
お金がなくて、魚介類が好きな苦労人???

・・・辞書って・・・
どれでも同じだと思ってませんか?

あたしも、そう思ってた(笑)
この本を読むまで

辞書=最大公約数的かつ簡潔な表現だって

でも、よく考えたら
辞書が個性的であったら、だめだって誰が決めたの?
わからないことを調べるために使うんだから
よりわかりやすい例具体的な表現がいっぱいあったって
誰も困らないよね(笑)

そんな当たり前のことが当たり前じゃないからこそ
新解さんは素敵なのだ

新解さん
新明解国語辞典の中に、ほの見える男の人で
赤瀬川さんがそう名付けただけなんだけど・・・
確かに彼はそこにいて
他の辞書の中の人とは全く違う言葉を話す

ああああ
もう、この本まるごとコピペして載せたいよ(笑)

じゃあ、あたしの好きな新解さんらしい言葉を

れんあい【恋愛】特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態。
が、が、合体だよ?(笑)
しかも何だか苦しい片思いを経験したような切実さ!

しからば【然らば】(接)
「恋の本質はけっして性欲ではない。このことだけは私は確信している。―恋の本質とは何であろうか」

・・・あ、あの・・・「しからば」の用例に
ここまで恋を語るんですね?
あなたのそういうところが・・・好き

たりる【足りる】・・・するに十分である。まにあう。
「五千円あれば一週間は何とか―」

お金持ちではないようだ

あかがい【赤貝】海でとれる二枚貝の一種。貝殻は心臓形、肉は赤くてうまい。[フネガイ科]<かぞえ方>一枚
美味しかったんだね(笑)   しかも親切(笑)

ごきぶり[「御器かぶり」の変化]台所を初め、住宅のあらゆる部分にすむ、油色の平たい害虫。さわると臭い。あぶらむし。<かぞえ方>一匹
さわったんだ(笑)でも親切(笑)

・・・見えた?新解さん
こういう人です
読んだら、もっとリアルに彼の姿が・・・
見える人には見えます

もちろん、彼の姿をわかりやすく見せてくれる
赤瀬川さんの文章もすごくいいんだ
新解さんネタではない後半のエッセイ
紙がみの消息」も面白いよ

よく、無人島に行くなら広辞苑持って行く
っていう人いるけど
あたしなら、絶対、新明解国語辞典三版(持ってる。笑)

*えーと。10年も前に出た読書界では有名な本だし・・・
一時期テレビなんかでも取り上げられたこともあったから
いまさらかな、と思ったけど
若い人の中には知らない人もいるかもしれないし
大好きな本だから紹介しておく

sinkaisan.jpg

「新解さんの謎」赤瀬川原平(文藝春秋)

赤瀬川原平(尾辻克彦)の本
「我輩は猫の友だちである」SOLDOUT
「不思議の国の広告」


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まさに神をも恐れぬ所業です(大汗)
でも、最低で最高です

カバー表紙から一目でわかるようにメインは
<漫画の神様>手塚治虫のパロディ
(他に藤子不二雄、永井豪、本宮ひろ志の画風に激似の作品も)

まるで手塚星から飛来した宇宙生命体ミギーが
右手に憑依したかのような(笑)
手塚治虫そのもののタッチ
トーンや、台詞や擬音の書き文字まで
雰囲気は手塚ワールド以外の何物でもない
なんか、手塚先生のクローンを誕生させる国家的な陰謀でも
起こったのかという妄想まで生まれるほどだ

そして・・・
そのテーマはエロ!

輝くばかりに最低のエロ(笑)
何が最低かというと全然やらしくないから(笑)
どう考えても、おかずにならない
真の主題は「笑い」である
ここではエロは笑いに奉仕する下僕
あの美しくもエロティックな手塚先生描くオパーイを
笑いの道具にしてしまうほどのバカっぷりは「神罰」にふさわしい
これほどまでに、かの巨匠にシンクロできる画力を持ちながら
選んだ素材が、子どもが条件反射で笑ってしまうような
お〇ぱい、ち〇こ、ま〇こだなんて・・・(嘘泣き)
・・・好きだ、こんな変な人(笑)

命を削って、危険な笑いに爆走する男・田中圭一
ほんとに作家生命の削り方を完全に間違えてる(笑)
これ、一歩間違ったら、ほんとに、やばかったんじゃない?
でも、確信を持って、笑いを追及した真摯な姿勢は
各方面にきちんと伝わったみたいで
抹殺されずに、こうして単行本になったこと
元ネタとなった漫画家さん、そしてその関係者が
これを許容しているという、そのことが
日本のマンガ文化の懐の深さを物語る
・・・す、すばらしいです(本気泣き)

あはははは!
表紙の
「お願いです
訴えないで下さい!!」


に対応して

帯に
「訴えます!! 手塚るみ子(怒」

という手書き文字を提供した、手塚るみ子さん(笑)

そして、買った人には是非是非楽しんでほしい
手塚ファミリーの太っ腹が・・・もうひとつ、カバー裏に!

「神は天にいまし 世はすべてこともない わきゃあない」
という作品

・・・・ああああ!!(悲鳴)
ギャルゲーに興じる
BJ、和登、そして手塚先生・・・

まさしく、これぞ神の恩寵(笑)

*巻末に田中圭一がこの種のパロディを精神的に継承しようとした本家
というか先輩である、しりあがり寿との対談を収録
この作品の意図、裏話なども語られているぞ

sinbatsu.jpg

「神罰(田中圭一最低漫画全集)」田中圭一(イースト・プレス)

田中圭一の本
「神罰」




もう多分、この本を再び開くことはないと思う
牧野さん。ごめん・・・
(いや、別に知り合いでもなんでもないんだけど。笑)

でも、ただならぬモノを感じたよ(汗)
文章で人になんらかの感情を喚起させるというのは
簡単なようで難しいことだし
薄っぺらなリアリティ稚拙な表現力では
かなりグロいものも含め
ものすごい数の本を読んでるぺんが
あわや教会送りか?っていうダメージを受けるほど
感情が揺れることはないはず

・・・すごい

たとえ、それがおそろしく強烈な不快感であっても

そういう意味で、この人の他の作品は楽しみ

ええと、ほんとに
けなしてるんじゃないんだよう(笑)
ややSFチックではあるけど
ミステリーとしてのオチも効いてるし
人に恐怖を体験させる物語」というのが
ホラーというものの定義なら
そりゃあ、もうかなりの高得点でしょう

ただ、根本的にこの話のテーマが
どうにもこうにも、あたしはダメ(泣)っていうだけなの

微妙にネタばれなような気がするけど
(あ、やな人はここで止めてね)
帯のコピーにも匂わせてあるし
察しのいい人なら少し読んだだけでわかるから

「多重債務者」に「高額所得者」、「エステ会員」に「かもリスト」
毎日様々な個人情報が持ち込まれ、
高値で取り引きされる名簿屋に勤める折原の元に
ある日、新しく持ち込まれた名簿には、
自分の情報が掲載されていた
不審に思い、名簿を持ち帰った折原は
テレビのニュースを見て愕然とする
凄惨な殺人事件の被害者の名前がその名簿に載っていたのだ
同僚の女性とともに謎を追う折原の行動と
並行して挿入される、どうやら「食に関する不快な記憶」を持つ
少年の手記のあいだには、どんな繋がりがあるのか?

えーとえーと・・・この本の主題は・・・
カニバリズム(人肉嗜食)です

うがああああ
思い出しただけでも、だめだあああ(泣)
あたしはモラリストでもないし
トマス・ハリスの小説に登場するハンニバル・レクター博士は
あたしの愛する人だし
調理するところを見せないでいてくれて
同じものを食することを強要さえしないでいてくれたら
一緒に暮らすのもありだと思ってたんだが・・・

「記憶の食卓」の食人描写の爆発的な破壊力はなんなんだ!?

うむむ・・・
メニューが「羊たちの沈黙」や「ハンニバル」に出てくるような
こじゃれた、おフランス料理(笑)じゃないから???
めっちゃリアルな日本人の食事だけに
想像したときの気持ちの悪さはメガトン級で・・・

人間も生物である以上、生命の維持は遺伝子の至上命令であろうし
極限状態での食人をあたしは責めようとは思わない
ただ、そうでない嗜好としてのカニバリズムは
どうしても、自分の行為としては許せないし
こんな、くらくらするほどの不快感を伴う禁忌
自分の中にあったことは
ある意味、新発見だよう

奇しくも同じ日に
二つのサイコ・ホラー・ミステリーを読むことになったわけだけど
永井さんのはホラーっぽいミステリーで
牧野さんのはミステリーっぽいホラー
とぺんのMAGI(マギ)は可決
ってことで分類もホラーに入れるぞ

・・・・はああああ、本気で怖かった・・・

kiokunoshokutaku.jpg

「記憶の食卓」牧野修(角川書店)

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若い女性が突然、路上に飛び出し、車に轢かれて死亡した。
事故と他殺が疑われたこの事件は、
被害者の特異な容貌から別の注目を浴びることになった。
興味を持った女性ライターが取材を進めると、
同じ地域でまた新たな事件が起こる。
真相に辿り着いた彼女が見たものは―。
かつてない犯人像と不可思議な動機とは・・・

んんん。
これは倒叙型ミステリーに分類したらいいのかなあ
犯人は最初から、バレバレだし・・・(笑)
っつーか別に隠してないし
むしろミステリーというよりサイコ・ホラーなのか?
と思った

お金にもそこそこ恵まれ
妊娠中でしあわせいっぱいのおっとりした主婦
殺人という言葉からは最も遠く思えるキャラクター乃ノ香

対するは
男性社会の中でなんとか才能を発揮したいと思い
自分だけの記事を書くため
真相を追うライター多恵
ふとした興味から取材をはじめた事件
そして不思議な偶然から
事件が起こった場所以外は共通点がなく
警察でさえ関連づけていない別の事件にも共通する犯人像に
気付いてしまった彼女は
特ダネという名誉欲だけでなく
おさえがたい好奇心にかられて、乃ノ香に接触する

都会生活の中の不快なことがら
(通勤や外出の電車でのマナーの欠如や
ちょっとした無礼
近所のなんだか変で迷惑な人)という
身近な出来事を通じて
平凡に見える人間の心の中のどろどろな悪意と
それが殺意に簡単に結びついてしまうサイコっぷりを描いた見事な心理描写
警察捜査の手順ではなく
取材を通して知り合った「お友達」というスタンスで
女性ならではの観察眼で
細かな証拠から
次第に犯人の確証を深めていく過程がおもしろい

自分の身に迫る危険を知りつつ
互いに探り合う女同士のバトル
こ、こわい・・・

ほとんど、サイコホラーに軍配が上がりかけた
最後の最後で
ああ、やっぱ、これ、ミステリーだったんだ
という衝撃の結末
ありふれて見えた短いタイトル「ダブル」の意味が
ずし~~~~ん
とした読み応えを心に残す

最後のこの、ひとひねりが
並みのストーリーテラーではなかなかできないかも?

double.jpg

「ダブル」永井するみ(双葉社)

永井するみの本
「ボランティア・スピリット」SOLDOUT

テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

生後五ヶ月の娘の目の前で惨殺された妻・祥子
犯人は、十三歳の少年三人
少年犯罪であるため、
もちろん犯人は裁判にかけられることもなく
被害者の家族には犯行の理由さえ知らされることはない
悪夢のような出来事から
娘のために何とか立ち直ることだけに
日々を費やしてきた夫・桧山貴志
四年後、犯人の少年の一人が殺され、桧山に容疑が・・・?!
彼は目をそむけようとしてきた現実と向き合うことに
そして、彼の知らない妻の過去が・・・

う、う、上手っ!!
伏線が見事に生かされ
最後の章の驚きの結末
うは~~~すげー
というのが第一印象

でも、再読すると
ミステリー構築のテクニックだけでなく
改正少年法施行前の犯罪を主題に
被害者や遺族の感情を丁寧に描いていること
また、被害者側の視点だけでなく
「更正」や「贖罪」という部分にまで
踏み込んでいることで
様々なことを考えるきっかけとなる深い内容になっている

特徴的なのは
不幸な偶然の果てに
被害者でもあり加害者でもある>人物
が複数登場することか

実際、犯罪というのは
人の感情や欲やいろんなものが連鎖した結果に生まれるもので
一つの悪意の芽生えたところには
別の黒い種が生まれたりもするだろう

また、悪意だけではなく愛からも犯罪は生まれてしまうのだ
悲しいことに

突然、大切な人をなくしたら
殺した相手を許すことができるのか?

理不尽な暴力や心の痛みから
愛する人を救うために、原因を排除しようとしても
やはり、それは罪なのか?
(これは東野圭吾「容疑者Xの献身」のテーマです)

被害者も加害者も傷ついている
そして、その家族も
だからこそ
「報復」という連鎖をどこかで断ち切ることができないか・・・
という強い願いがこめられた作品だと思う

ミステリーとして完成度の非常に高い作品でもあるし
また、少年犯罪少年法について
興味のある人にも
フィクションではあるけど
問題点を明らかにするための
「被害者側の立場」を知るものとして役立つ

できれば、これとあわせて
真保裕一「繋がれた明日」
読むといいかも・・・
こっちは「加害者の立場」

「ミステリという物語の多くは、犯人が逮捕されて事件が解決し、それで終わる。
だが、現実の殺人は、犯人が逮捕されたからといって、
すべてが解決するわけではない。
被害者、並びに加害者の身内は、
癒えない傷を抱えて先の人生を歩んでいかねばならない。
当然ながら罪を犯した当の本人にも、過酷な現実が待ち受けている。
そして、彼らの多くは、刑期を終えれば、我々の社会に戻ってくる。」
(真保裕一)
作者の言葉のとおり
人を殺してしまった男に明日はあるのか?
19歳で殺人を犯し、26歳で少年刑務所を出た主人公が、
「俺は殺そうとしたのではない!」という消えぬ思いと、
失われた命に対する懺悔 の念に揺れ動きながら
世間の厳しい視線の中で生き抜こうとする姿を描いた作品

どちらかに偏るのではなく
できるかぎり公正な立場で
これ以上、悲しい出来事が起こらないように・・・
もしも、起こってしまったときに
被害者の、加害者の(家族の)その後の人生が
損なわれないように
考えていくことが、できるだろうか、あたしたちは

20070501155523.jpg


「天使のナイフ」薬丸岳(講談社)

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ぺんぺん

Author:ぺんぺん
古本ぺんぎん堂店主
☆成分分析:
ぺんぺんの90%は本でできています
残りは音楽と映画と酒と美味しいものでできているようです

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暇だったら一日一ぽちっ(笑)
読んで少しでも参考になったという方がいらしたら、励みになりますので、これまた、愛のぽちっ、をお願いします


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