生涯一書痴! 病高じて古本屋の店主になってしまった、ぺんぺんの読書日記です。書評ってほど偉そうなものではないですが(汗)読んで楽しかった本、いろいろ考えた本を紹介したいです
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ある意味、最も怒りを覚えた本・オブ・ザ・イヤー(汗)

ある日、電車内で痴漢に間違われて逮捕され、
警察、検察での理不尽な取調べ、裁判の末、1年6ヶ月の実刑に処された著者が
刑事裁判の恐るべき現実を綴った衝撃の冤罪日記。

映画監督・周防正行の最新作『それでもボクはやってない』(07年1月公開)は
お父さんはやってない」(矢田部孝司・矢田部あつ子/太田出版)で
語られている痴漢冤罪事件がきっかけといわれているが
この「彼女は嘘をついている」の小泉さんの事件への怒りが
さらに大きなモチベーションになっている気がした。
痴漢冤罪事件で加害者にされてしまった著者自身が綴った手記は
矢田部さんのもののほかに
ぼくは痴漢じゃない!冤罪事件643日の記録」(鈴木健夫/新潮社)があって
矢田部さん、鈴木さんの著作も
あまりにもひどい警察、検察、裁判所の実態が
浮き彫りにされているけど
その理不尽な日本の司法制度と闘い
有罪から逆転無罪を勝ち取ったのに対し
小泉さんの本は実刑判決まで受けて服役した後に書かれたものだからだ。

<映画にして、この怒りを多くの人に伝えたい
日本の司法制度に対する疑問を投げかけたい>
そういう周防監督と同じ怒りを
あたしも確かに感じたのだ。

もう、今までにないほど、強く。

ひとつは・・・
痴漢」という行為への怒り。
ストーカー、セクハラ、盗撮、強姦などの性犯罪もしかり。
歪んだ欲望だけで、異性の心や身体を傷つける行為は
最も卑劣な犯罪だということを知って欲しい。

異性の体にさわりたいなら
合コン行って、恋人つくれ。
恋愛が無理なら見合いしろ。
それもだめなら、風俗へ行け。


個人的には風俗を認めたくない気持ちはあるけど
それは合法で、需要と供給で成り立つ世界で
どんな欲望も金銭を対価として認めてもらえるんだよ?
その金を惜しんで、望んでもいない相手を傷つける権利がいったい誰にあるというんだ?

減るもんじゃないだろ?」ってか?!

減るんだよ!!

好きな人、大事な人にだけに許したい「純情」「純潔」が!!
そして、その安易な「なでなで」が
許しがたい行為に敏感になってる人々の気持ちを逆撫でして
何もしてないのに冤罪を受ける不幸な人間の連鎖を作ったことを
心から、悔いてほしいよ(涙)

ひとつは・・・
「被害者」という名の犯罪者への怒り。
痴漢被害にあったという人のほとんどが
女性だと思うから
あえて、女性を想定して言うけど・・・
もしも。その事件が
なんとなく、電車で近くにいたおっさんがむかついたから、とか
さわられてはないけど、酔っ払いにからまれて嫌だったからとか
ほとんどの男が面倒を回避するために示談を選ぶのをみこして数万の金を詐取するためとか
遅刻の言い訳に「痴漢にあった」と言ってしまってひっこみがつかなくなったとか
(小泉さんの事件は、この理由だと思われる)
痴漢にあったのは事実だが
それをしたのがあなたが「痴漢です!」と言った人物だと
確信できる状況でない、曖昧な推定による告発とか・・・
なら
あなたのしたことは犯罪だよ?
一人の人間を社会的に抹殺するに等しい冤罪は
ほんとの殺人と大差ない、とんでもない出来事なんだぞ、当事者には。
それは、間違って犯人にされた人だけでなく
今まで、痴漢にあって、それを言えずに
泣き寝入りしてきた、すべての女性と
勇気を持って、訴えた女性たちへの冒涜でもあることを知ってる?

過去の様々な事例があったから
痴漢事件が被害として犯罪として
きちんと認められるようになり
女性専用車両の導入などの予防策もとられるようになった。
そこにいきつくまでには
つらい思いをした女性たちの犠牲があったことをわかってる?
普通にお洒落を楽しんでるだけなのに
隙がある、挑発的な格好をしているから被害にあうんだ
と心の痛みを認めてもらえなかった人もいるだろうし
思い出すだけで嫌な出来事を
事情聴取や裁判で、何度も何度も話さなければならなかった被害者のことを
あなたは考えたことがあるのかな?

そして最後に・・・
日本の司法制度への怒り。
これが一番大きい。
かよわい女性の訴えをできるかぎり認めよう
という志はありがたい。
実は、あたしも数回、痴漢の被害にあったことがあるから。
でも、その訴えのすべてが真実だと断定するには
一人の男性を犯罪の加害者として罪を問うには
それなりの手続きがあってしかるべきじゃないのですか?
今の世の中は、あなたたちが思う以上に病んでいる。
たいした理由もなく、人に冤罪を背負わせて平気な人間がいるという
悲しい事実に対する認識に欠けてませんか?
言ったもの勝ち
始めから結論の決まっている起訴・裁判に対する不信感に
いい加減気付いてはくれないかな?
調べる側、裁く側の予断でベルトコンベア式
犯罪者にしたてあげられた人の
人権はいったいどうなるんでしょう?

この種の痴漢冤罪事件に対して世の中の男性の反応が
「無実でも無罪とはかぎらない。明日はわが身。
精一杯、疑われないためには・・・
男はみんなバンザイ通勤!
他国に移住!
無罪を主張し続けるコスト(時間や裁判にかかる費用)は限りなく高くつくから
無実でもあっさり認めて数万円の慰謝料での示談ですますのが得策!」
なんていう発言があふれる世の中が
本当に正しいのですか?

かわいそうすぎる・・・・

冤罪の当事者のほとんどは
いくら無罪になっても
もとの職場に居辛くなって退職を余儀なくされたり
無罪と認められたのに事件の当事者として疑いをかけられたという事実だけで
肩身の狭い思いをしてるというのに・・・

国民による「裁判員制度」を目前にして
もっともっと司法について知りたいと切実に思った。
正しい判断のできる人間でありたい。
本来、国民をしあわせにするための立法・司法・行政が
その役割を全うしていないとしたら
それを正していくのが国民の義務であると思うのに
そうできない今のシステムは変えていかないといけないんじゃないか?

様々なことを考えさせてくれたことに対して
心から感謝します。
願わくは、
この本を読む限り、疑わしいところのない小泉さんの
無実が立証されますように・・・
勇気ある人間の名誉が回復されますように・・・

ただ、やってないからやってないと
主張しただけの人が
長きにわたって
つらい思いをすることがないようにって思いました。
多くの人がこの経験を共有してくれたらうれしいと・・・

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「彼女は嘘をついている」小泉知樹(文藝春秋)
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竜崎伸也、四十六歳、東大卒。
警察庁長官官房総務課長。
連続殺人事件のマスコミ対策に追われる竜崎は、
衝撃の真相に気づいた。
そんな折、竜崎は息子の犯罪行為を知る――。
保身に走る上層部、上からの命令に苦慮する現場指揮官、
混乱する捜査本部。
孤立無援の男は、組織の威信を守ることができるのか?

全然、新人じゃないと思うが(爆)
第27回 吉川英治文学新人賞受賞作(笑)
賞の名に恥じない作品だ。

ユニークな点がふたつ。

ひとつは、帯の「新・警察小説」という名の通り、
従来の警察小説とは全く、違う視点で描かれていること。

「事件は会議室で起こっているんじゃない!

現場で起こってるんだっ」


踊る 大捜査線」で有名になった青島刑事のこのセリフ。
現場で捜査にあたる刑事の地道で緻密な働きと
キャリアである上司の無理解や勝手な思惑との対立。
「警察小説」の王道といえば、これだよね(笑)
横山秀夫や、先日取り上げた雫井脩介の「犯人に告ぐ」
こういうタイプで、警察小説好きを釘付けにしている。
ところが、この小説では、現場の捜査の詳細はあまり重要ではない。
つーか、

「事件は現場で起こってる!

でも、会議室では、

とんでもないことが起こってるんだっ!」


という感じ?(笑)

よく、警察小説に登場するキャリアは
警視庁捜査〇課の警視だったりするけど
まだ、この段階では下っぱーと言ってもよい(らしい?)
国家公務員Ⅰ種試験に合格し、警察庁に採用された国家公務員が
キャリアであり、
警察庁とは、国家機関で、全国の都道府県警察を束ねているところ。
犯罪捜査などは行わず、警察行政や全国の都道府県警に関する事務や
国会答弁に関する資料の作成など政治とも深い関わりをもつ。
一方、警視庁東京の警察本部で、
東京の治安維持や犯罪捜査などにあたっており
埼玉県警察本部や神奈川県警察本部というような県警本部と
位置づけは同じで、
当然、警察庁の役職の方が
階級が上であることが多い。
竜崎が務める、警察庁での課長職というのは
県警なら本部長、本庁(警視庁)でも部長クラスに相当する
エリート中のエリートなのだ。

一見、無関係に思えた複数の殺人事件。
その被害者は、過去の凶悪な少年犯罪の加害者だった・・・
関係者の復讐か、それとも偶然か・・・
センセーショナルな大事件に発展しかねない出来事に
警察全体のマスコミ対応を取り仕切る役割である竜崎は
ついに、警察機構を揺るがす最悪の事態を察知する・・・
キャリア対キャリアの目に見えない戦いが始まる。
彼は自分の信じる社会正義を貫きとおすことが
できるのだろうか・・・
普通の警察小説では表に出てこないキャリアたちの
壮絶な仕事ぶりと情報戦が、息を呑むような緊迫感をかもし出す。

もう、ひとつは主人公のキャラクターだ。

竜崎伸也。
絵に描いたようなキャリア官僚。
有名私立大学の入試に受かった息子を、
東大以外は大学ではない」と浪人させる。
娘の縁談について妻から相談されれば、
俺は国のことを考える。おまえは家のことを考えてくれ
と真顔で言い放つ。

こんなおっさん、ダンナだったら嫌だし

親父(父親)だったら、もっと嫌!!(笑)


と、読者はいきなり、どん引くこと間違いなしだ(爆)

国家を司る官僚に純粋な使命感を持ち、
キャリアであることのプライドに満ちた、キャリア官僚。

読む進むうち、読者は
最初の印象とは異なる
彼の不思議な魅力に惹きつけられていくだろう。
それは彼の信じるエリートが、
権利だけではなく義務を併せ持ったものであり
彼が出世を望むのは、
より高位の権力を手に入れることで
彼が信じる社会正義を貫き
国民に奉仕する国家公務員としての役割を全うできる

本気で信じているからだ。

四面楚歌のキャリアの世界で
出世の階段を踏み外さないよう
慎重に行動し発言するのを旨とするかれだが
それは決して、私欲のためではないのだ。
ここまで、「エリート」であり官僚である自分に
矜持を持って働いている人間は、そういないはずだ。

彼は彼の言うところの「正しいエリート意識」を持っている。
ある種の驚きをもって、この嫌なおっさんの生真面目な働きぶりに
徐々に共感を覚え始めるころ、
身内の不祥事、そして、ついに犯人らしき人物の逮捕。
自分の倫理観と信じる正義
そして官僚社会の組織論と国家警察としてのあるべき姿

ふたつの狭間で最善を尽くそうとする彼は
いつのまにか
傷ついた孤高のヒーローにさえ見えてくるのだ。

このあたりが、著者のヴェテランとしての手練手管なのだろうが
それに素直に身をまかせて、楽しもう。

痛快なエンターテインメント小説だが
素材となる連続殺人を通じて、
いま、法律や報道の世界で
常に議論の的となっている少年法の問題を
扱っているのも今野敏らしい。

ラストに、思わず、くすり、と小さな笑みを
与えてくれるような余韻があり
これは、まさか続編への含みじゃないよなあ・・・
あれば、いいなあ
と思ってたら
なんと2007年4月に続編
果断 隠蔽捜査2」が出たらしい。
読まなきゃ(笑)

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「隠蔽捜査」今野敏(新潮社)

今野敏の本
「ST警視庁科学特捜班」
「ST警視庁科学特捜班 毒物殺人」

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ぺんぺん

Author:ぺんぺん
古本ぺんぎん堂店主
☆成分分析:
ぺんぺんの90%は本でできています
残りは音楽と映画と酒と美味しいものでできているようです

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ぺんぺんファンのショッカーのみんな
暇だったら一日一ぽちっ(笑)
読んで少しでも参考になったという方がいらしたら、励みになりますので、これまた、愛のぽちっ、をお願いします


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