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生涯一書痴! 病高じて古本屋の店主になってしまった、ぺんぺんの読書日記です。書評ってほど偉そうなものではないですが(汗)読んで楽しかった本、いろいろ考えた本を紹介したいです
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神奈川県警は、全く手がかりがつかめない連続児童誘拐殺人事件
手をこまねいていた。
万策尽きかけていたそのとき、
打開策としてTVメディアを使って犯人に直接呼びかけを行い
犯人の反応を待つという前代未聞の捜査方法が提案され
大衆の前に立つ広告塔として、白羽の矢が立てられたのが巻島である。
彼は過去に、児童誘拐事件の捜査に失敗し、
その後のマスコミ対応でも失態を演じたために、
左遷させられていた刑事。
かつて自分の身を破滅させたマスコミを手なづけ、
事件を解決しようと試みる巻島の苦闘と
個性的な登場人物たちの思惑が複雑に絡み合いながら進行する
“劇場型捜査”を、
圧倒的な臨場感で描く異色の警察小説

もちろん、ミステリーに分類していいタイプの本だと思うし
実際、2004年度のミステリーでは
国内ナンバー1に選ばれたりしてるんだけど
むしろ、普段あまりミステリーを読まない人に
おすすめしたい作品。
トリックで読ませる小説でないし、大きな仕掛けがあるわけでもない。
でも、とにかく、「人間」がきっちり描かれていて
そのリアリティと心情への共感で、物語にあっというまに取り込まれてしまう。

本を読みなれていない人は、たぶんドン引く
370ページ2段組のヴォリューム(笑)
でも、だいじょぶ!
とにかく読み始めてみよう
きっと、ページをめくるのがもどかしいくらいのスピードで
物語があなたを運んでくれる。
震えるような結末へと。

まずはテレビを使っての劇場型捜査という設定がいい。
これに関しては、荒唐無稽とか、「ありえねー」的な
感想もあると思うが
怨恨などではなく、何の共通点もない男児だけを狙っての誘拐殺人
自らをバットマンと名乗る犯人
典型的な劇場型犯罪(演劇の演出のように、マスコミを通じて大衆に知られる際の、
効果への狙いを感じられる犯罪)に対して
自尊心をくすぐること、挑発すること、動揺を誘うことを
目的とした劇場型捜査は有効であり
漫画『DEATH NOTE』
L(エル)がキラの犯人像をしぼるために
テレビで呼びかけたシーンと同様
充分にリアリティが感じられた。
日本で劇場型捜査が行われる日はそんなに遠くないかも。

そして、キャラクター造形と人物描写の上手さに
引きこまれる。
主人公、巻島はエリートコースからはずれた
アウトロー的な敏腕警視という
この手の警察小説では
それほどめずらしい設定ではないが(大沢在昌の「新宿鮫」の鮫島とか)
大きな失敗の後のある種の諦観を漂わせつつ
表にはあらわさない諦めきれない何か
刑事として忘れてはならない何かを胸に抱き
意地と覚悟と矜持を持って
自らの仕事をまっとうしようとする揺ぎ無い意志が
巻島というキャラクターに強いオーラをまとわせる。
巻島だけでなく、
彼を支える温厚で人の痛みを解する「津田長」こと津田刑事や、
老練なニュースキャスター、
多くを尋ねたりせず、朗らかな気性で家庭を守る巻島の妻
チョンボの名を冠したダメ刑事
現場の人間をコマのように、事件を他人事のようにしか感じられず
捜査情報を好きな女性の気を引くための道具に使う歪んだキャリア管理官
そして被害者と被害者の家族
など
多くの登場人物の個性がくっきりと描かれていることが
物語に厚みとリアリティを与えている

そして何より、この物語の面白さは
重層的な構造だろう。
巻島が闘う相手は一人ではないということ。
至上の目的は犯人逮捕であるが
捜査は単なる正義と悪の対決だけでは終わらない。
巻島はすべてを賭けて犯人と対峙する前に
別の大きな敵とも闘わないとならないのだ。
警察機構と獰猛なマスメディア・・・
この強大な<組織>はある意味で犯人以上に厄介で
ただ一人で孤独な闘いを強いられる巻島の姿に胸が苦しくなる。

警察>においては
一部のエリートを中心とする独善的な采配
所轄同士のの連携の希薄さ
新型犯罪に対応しきれない旧型の捜査方式
私利私欲のためのリーク

テレビというマスメディア>においては
視聴率という数字がすべての他局とのあざといスクープ争い
一部の意見を世論へとすり替える意図的な情報操作
人権を無視した取材合戦

二つの組織の打算や思惑が入り混じり
いったい誰と闘っているのかわからなくなるような徒労の繰り返しの中で
ささやかな成果を繋ぎ合わせ
姿の見えない相手からの悪意」を
巧みにかわして少しずつ少しずつ、犯人へと近づいていく巻島。
けれど、日に日に彼への批判は高まり
残された時間は減っていく。

「バットマンに告ぐ
お前は包囲された・・・(略)

・・・今夜は震えて眠れ


ラスト近くの巻島の台詞で
あたしが震えました(笑)

現実の捜査同様、物語の中でも
早々、都合よく犯人は動いてくれない
ましてや、獅子身中の虫のごとく、警察内部から邪魔が入る・・・
すっかり作者の術中なんでしょうが(笑)
思うように進展しない捜査と
上手く行っていたと思われたマスコミ対策の中で吹き始めた逆風
上司からの最後通牒とも言える発言などで
巻島に感情移入すればするほど
読んでる自分も焦燥感のピーク(汗)

そこで・・・・!!

この本のタイトルの示す箇所であり
読者も、巻島と一緒に耐えて耐えて耐えて
最後の反撃が始まる合図
ここから、様々な伏線の解決があり
心理ドラマが怒涛のごとく最後の一行に向けて収束していくわけで
この台詞自体は
ミステリーにおける「お前が犯人だっ!」みたいなキメの言葉では
決してないんだけど(笑)
やっと、ここまで・・・
という、強烈なカタルシスはすごいです

今夜は震えてください(笑)

さてさて。
読んでる最中も映像が脳裏に浮かぶような作品で
書評なんかでも、
映画化されたら誰が巻島役を演じるのか
が話題になってたけど・・・

もう決まってるんだ!?(汗)

うおおおお

トヨエツかあああ
ちょっと若すぎないか???(笑)

映画「犯人に告ぐ」は、
WOWOWが設立した劇場映画レーベル「WOWOW FILMS」の第1弾として
瀧本智行監督、豊川悦司・石橋凌・井川遥・松田美由紀らの出演で制作
先日(6月24日)にWOWOWで一夜限定で先行放送され
今秋劇場公開だって
ちょっと観たい・・・

*おまけ*
その「WOWOW FILMS」の第2弾(2008年公開予定)は
先日、ここで紹介した「きみの友だち」(重松清)が原作
うむむむ、なかなか渋いセレクトだにゃ(笑)

hannin.jpg

「犯人に告ぐ」雫井脩介(双葉社)
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  【2007/07/28 Sat】
キャラクターキャラクターは、小説、漫画、映画、アニメ、コンピューターゲームなどのフィクションに登場する人物や動物など、あるいはそれら登場人物の性格や性質のこと。人間や動物のような生物や、生物を模したロボットに限らず、さまざまな道具、時には生物の器官、星や
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